第29話 迷いの森とオシキャットの憤怒(5)

EXTRA EPISODE 「どうも気に入らんな」


 俺はレオナルド、周りの猫たちからは『レオ』という通り名で呼ばれている。


 家猫だから公園では家猫側で戦うけれど、別に野良の奴らが憎いと思ったことはない。どっちかっていうとガンツとかドブとかトンカツとか、野良猫の奴らの方に親しみを感じるくらいのもんだ。


 ボッツ様からガンツのとこのチビ猫を捕まえるように指令があった。そういうのは小狡こずるいルノーとかが適役だろうが、一度失敗したらしいな。


 それにしたって昼間の争いは確か猫神様から禁じられていたはずだが。


 何だか気が進まない仕事だったが、渋々集合場所の東公園に行ってみると動員をかけられた猫が20匹以上待っていた。何だ、こりゃあ。


 確かにあのチビ、フールといったか、あいつは特殊な猫かもしれんが、たぶん1歳にもなってない子供だろう。それを大人数十匹で攫おうなんてどう考えてもまっとうな猫のやることじゃねえ。

 かといって拒めばボッツ様に何をされるかわからん。


 俺はこっそり自分の腹心猫ふくしんねこ、ホクサイを呼んだ。

「おい、チャイムの頃にガンツに知らせろ。南の森でチビがピンチだってな」


「…レオさん、大丈夫ですか」


「気に食わんのだ」


「…」


「子猫攫いなんてまっぴらだ」


「わかりました。伝えてきます」





 予定通り、黒猫フェルがフールとポンタを路地から西の森に追い込んだ。

 何だかんだ言っても素早いポンタと変なシッポを持つフールのコンビを捕らえるのは簡単なことじゃないだろう。だが、これで袋のネズミだ。


 後はフールの運次第だな。ガンツやセージの援軍が早いか、フェルがフールを捕まえるか。

 俺はどうするかっていうと…うーん、やっぱりチビ猫攫いなんぞ気に食わんな。


 いつからこの街の猫たちはこんな風になっちまったのかね。ああ、ホントに気に食わん。

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