第25話 迷いの森とオシキャットの憤怒(1)

「猫神様!ボッツを止めるにはどうしたら…」


「フール、そろそろ時間じゃ。其方にその方法を伝えることは難しい。なぜならボッツの『賢者』も其方の『愚者』もワシの一部だからじゃ。だが、其方がボッツと本当の意味で対峙すれば、それはおのずと判る。シッポを掴まれるな。シッポを掴め」


「それだけ?…ケチケチしないで、教えてくださいよ。ねえ、猫神様♡ニャンニャン」

 私は必殺の甘え猫ボイスを出してみた。


「うっ。…ちょっとだけじゃぞ」

 超甘い。チョロい神様もいたものだ。


「ボッツは太陽の光に弱い」

 意外な答えだった。吸血鬼みたいだ。


「するとお日様で焼けちゃうとか…」


「そこまでではない。奴の『賢者』は真夏の太陽や、南中の太陽などに力が弱まる。まったく使えなくなるわけではないが、光の強さに反比例して弱まり、真夏の正午付近などは発動しないだろうな」 


 これはいいことを聞いた。万が一次にガンツにお説教される時がきたら、教えてあげよう。

 でも情報ソースを尋ねられると困るけどね。


「フール、お前にもボッツと同様の弱点がある。お前の方がもっと不安定じゃが」


「え?でも私、太陽とか平気ですよ」


「そうではない。お前とボッツは相反する2つの力、硬貨の裏表、陰と陽…」


 まだるっこしい猫神様の言葉をつい遮さえぎって、声をあげる。

「もう、だから!何?何なの?」


「フール、時間じゃ。ワシはお告げはできても『賢者』と『愚者』どちらかの一方的な味方はできないのだ。ボッツを止めて欲しくて、もうだいぶ贔屓したけれども。さあ、お前と蕗がもうじき分離する。蕗は何も覚えてはいないだろう。とっとと去るがいい」


「そんなワガママな…。ねえ、猫神様!猫神さ」


 真っ白な部屋の真ん中に大きなリンゴ…という空間がボンヤリと薄まり、あたりは再び蕗の部屋の輪郭を作り始める。


 少しの目眩の後、眼を開けると元の部屋の元のフールに戻っていた。


 蕗が呟く。

「あれ?何?この猫ちゃんたちは?何でここに猫ちゃんが?」


 私たちは窓からサヨナラすることにした。

 ほんのちょっとの置き土産をおいて。


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