第17話 逆回りする時計 恍惚のノルウェージャン・フォレストキャット(4)

「また明日」と言ったポンタは翌日は顔を見せず、3日たってようやく工場の裏にやって来た。


「フール、今日は朝から探検するぞ」


「へっ?どこへ?」


 ポンタがヘナヘナと崩れ落ちた。

「お前なあ、俺は苦労してだなあ」


「ごめん、ごめん。ちょっとからかっただけだよ。ありがとう」


 ポンタがムスッとしているので、私は真顔で謝る。

「隣町に行く手はずを整えてくれたんだよね。ごめん、謝るから。よろしく!ポンちゃん♡」


「ポ、ポ、ポンちゃん?!」


「アハハハ、嫌だったらやめとくよ」


「…よし、行くぞ」

 自分の呼称の是非については答えず、ポンタが私を促す。


 工場の奥からガンツが出てきた。

「おう、ポンタ。何か久しぶりじゃねえか。今日はどこへ行くんだ」


 ポンタはちょっとスンとした後、ニコリと笑った。

「今日は南の河川敷から駅の駐車場までフールに水飲み場を教える」


 ガンツがフムフムと頷く。

「わかった。ポンタ、フールを頼むぞ」


「わかったよ。毎回同じこと」


「それから…」


「くどいな」

 ポンタはガンツと眼を合わせない。


「わかってんのか、ポンタ。フールに手を出すな」


 ポンタはそれを無視して、路地裏から出て行く。


「おい、ポンタ。返事は?」


 ガンツの声が後ろから聞こえるが、ポンタは私を促して路地を出た。


「返事しないの?ポンタ?」


「別に。いつもいつものことだろ」


「フーン」


「何だよ」


「へー」


「何だって」


「ホー」


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