第4話 世界の始まりとスコティッシュ・フォールド(4)
EXTRA EPISODEⅡ 「我が輩は賢者セージである」
私はセージ、と近所の猫たちから呼ばれていますです。この街の野良猫は現在非常に厳しい状況にあるといっていいでしょう。
現在この街の野良猫と飼い猫の数はわずかに野良の数が多いと考えられるのです。ですが、飼い猫の彼らが
この傾向が顕著になったのは5~6年前に『ボッツ』という家猫の中でも特別な猫が出現して以来のことであります。
ボッツはブルーの体毛と深いグリーンの眼を持つ飼い猫のカリスマですな。ガンツと較べても遜色ないほどの大きい猫なのですが、その印象は真逆です。
ガンツがガッチリ型のドラネコでヤクザ顔とはいえ、どこか愛嬌のある雰囲気を持っているのに対して、ボッツはしなやかで長い四肢とシッポ、冷たい顔つきでいかにも『お貴族様』の空気を滲にじませます。
問題は彼が持っている特別な力です。私の研究では由緒正しい血統書を持つ猫には超能力があるのです。この間、フールを襲ったルノーの眼がその例といえるでしょう。
ですがボッツの力はあんなもの比較にもなりません。1年前、私はその一端を目撃して戦慄したものです。
ボッツがひと睨みするならば猫たちが胸を押さえて苦しみ始め、妙な鳴き声を浴びせれば気絶し、前足は当たってもいないのにガンツの眼と耳を切り裂いたのです。あの時は恐ろしゅうございました。
ボッツは何故か野良猫を目の敵にしていると聞きおよびました。今はまだ彼が夜の公園に出てくる頻度が少ないから私たちは耐えていられるのです。しかしこれからどうなるのでしょうか…
それにしても先日のあのフールの力も意味不明です。あの子猫は何か不思議ですね。ただただノロマというわけではありません。時々、妙に勘が鋭いところや、まるで大人のような思考能力を見せます。
ガンツが立ち直るきっかけになったのはいいのですが、敵の魔王ボッツとはまた別の意味で不確定要素といっていいでしょう。
もしかしたらあのシッポの力、先代の賢者が言い残した『愚者の大魔法』ではないのでしょうか。だとしたら私も一度あのシッポを掴んでみたいものです。
そう、『愚者の猫直列』は代々の賢者猫に伝わる伝説なのです。神の『愚者の尾』を掴んだものにはその力が流れ込むなどという…ま、これについては長くなるのでいつかまた。
とはいえ、フールが血統正しい猫だとしても驚きはありません。あの毛並みは普通ではないですからね。
ただ、あの折れ耳の種族に三種類の毛色が混じるというのはあまり見たことがありませんし、色もパステル調で独特すぎるように思います。由緒正しい一族の傍流というところでしょうか。あるいは超稀少セレブ猫か…まあそんなことはないでしょうけど。
要注意で要観察、我々の力になるのか、はたまた災いとなるのか…。
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