中
学校の最寄り駅に着き、ドアが開くアナウンスが流れた。早く降りないとと思っても、普段は考えるはずもないサボりという選択肢が頭に渦巻いて離れない。ぐだぐだ考えているとそのまま決断するまでもなく駅を見送った。
電車は変わらないリズムで学校を離れていく。ほとんど見たことがない最寄り駅の向こう側は新鮮な景色だった。もう少し見ていたい、そんな気持ちが湧き上がってきてしまった俺は引き返して授業に間に合う時間を過ぎても電車に乗り続けていた。
電車は大阪駅に着いた。とりあえずこのまま乗っているわけにもいかないので改札から出た。ピタパの履歴を見られたら親にバレるかなと心配しながらも、頭のもう片方ではどうでもいいかとも思っていた。
時間を潰す場所を求めて仕事に行く大人の間をくぐり抜け、近くのマクドナルドに入った。とりあえず適当にコーヒーとハッシュポテトを頼み席を確保した。
いつまでここにいようか、一応考えはしたがそれも面倒になってとりあえずスマホを開き時間を見ると、もう授業が始まる頃だった。
昼前になり、これ以上居座るのはキツいと店を出たが、特に行く当ても思いつかず、とりあえず駅から離れて歩き出した。
春の陽気に混じるタバコと排気ガスの匂いが鼻につく。気の向くままに歩いていくと図書館が見えた。行きたい場所も金もなく最適な居場所に思えた俺はそのまま図書館に入った。
図書館の柔らかいソファに腰掛けてスマホを確認した。学校の友人からの「サボんな!」というメッセージが来ているだけで他は何もなかった。「そういえば今日サボってたんだなあ」と当たり前のことを思い出して少しおかしく思えた。
連絡もなしに休んで、担任は怒っているだろうか。両親に俺が学校に来ていないと連絡が来ているだろうか。
まあ、そんなのも明日考えればいい。沈み込むソファが段々と思考力を奪っていった。紙の擦れる音とかすかに匂うホコリは枯れた生気を段々と潤してくれていた。
あれから気の向くままに見つけた本を開いてただ時間が過ぎていくのを感じていた。でも、時間が経てば必然的に閉館時刻が迫ってきてしまう。図書館には蛍の光とともに閉館の知らせが流れ、俺は図書館を出た。
玄関口を出て建物を見上げると、日常から守ってくれた図書館は少し頼もしく見えるようになっていた。
居場所を失った俺はまた駅へ向かっていた。部活の終了時刻も過ぎ、普段なら家で母と晩飯を食べている時間だった。スマホに不在着信が表示されていたが、そのまま電源を切って学校のバッグの中に突っ込んだ。
少し軽くなった体で少し重くなったバッグを揺らしながら吸殻が点在するアスファルトの上に足を運んでいった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます