#39 私だって結婚したかったわ!

ちゃとら千尋●ライブ


「みなさんはじめまして! ピコピコお耳にちゃめっけたっぷりの茶トラ猫。ニュースピリチュアル所属。ちゃとら千尋です! よろしくお願いします!」


 『はじめまして』

 『はじめまして~』

 『おはつ』


「自己紹介します。♪ある日 森の中 熊さんに 出会った」


 『突然歌い出しました』

 『突然歌うよ』

 『熊3P』


「熊さんと目が合って、熊さんが自分めがけて突進してきて、そこから先の記憶はありません。気がついたらこの世界にいました」


 『熊に殺された?』

 『熊さんぇェ』

 『それはお気の毒に』


「たぶん、その時、熊に襲われて死んだんだと思う」


 『おおう』

 『死んだ理由をはっきり言うのはめずらしい』


「しかし! 私はちゃとら猫に転生した! これからはVTuberの人生を謳歌しようと思う」


 『前向きだな』

 『ガンバ』

 『応援してます』




「ところでみなさん。このあいだの異世界配信、見ていただけましたか? 実は、転生したばかりで訳がわからなかったところを、たこさんウィンナーさんに声をかけてくださいまして、とりあえず異世界に来て! と言われて、異世界に来ました」


 『みた』

 『見た』

 『みたよ~』


「だから、ホント異世界に転生したと思ってたんですよ」


 『中世ヨーロッパ風異世界』

 『転生といったら異世界だからな』

 『正直異世界転生モノはおなかいっぱいなんだが』


「どうですか? 大活躍でしょう」


 『活躍?』

 『おおう』

 『墨でみえなかった』


「なにいってるんですか。勇者ハルカと対等に戦ったんですよ」


 『そうだね』

 『対等だったね』

 『はいはい強い強い』


「そういえば、たこさんウィンナーさんからもらった白いカプセル。いったいなんなのか訊き忘れてた」


 『カプセル?』

 『ありましたね』

 『物語に関係なかったが』

 『なんかの伏線だったのか』

 タコさんウインナー『精莢』

 『タコさんいた』


「タコさんいました?」


 『精莢だって』

 『精莢』


「なにそれ? なんて読むの?」


 『せいきょう』

 『せいきょう』


「なんだろ。調べてみよう」


 カタカタとネットを調べる。


「『精莢(せいきょう)とは、一部の動物のオスに見られる生殖器官で、精子を入れたカプセルとして切り離してメスに渡される。精子鞘とも呼ばれる。』要するに精子入りカプセルってこと?」


 『だな』

 『タコは雌の生殖器にこれを入れて繁殖するんよ』


「精子入りのカプセルよこすって最低! カプセルの形、絶妙なのがまた腹がたつ」


 タコさんウインナー『冗談だよ』


「冗談でもやっていい事と悪いことがあるでしょう! これ、セクハラですよ」


 タコさんウインナー『カプセルの中は空だから』


「精神的ダメージの方が強いわ!」


 タコさんウインナー『ごめんね』


「最低…」


 『ちゃとら激おこ』

 『たこさんやっちゃったな』

 『紛うことなきセクハラ』

 『セクハラ草』




「そういえば、この世界で妊娠できるんですかね?」


 『生理は無いらしい』


「できないのか? サイバー空間で産まれた子供って、どういう扱いになるんだろう」


 『PIRみたいな感じ?』


「PIRさんって、AIですよね。学習したら子供を産めるようにもなるのかしら」


 ラリィ=ル・レロ『ちょっと待って! カプセルあたしももらった』

 可愛美麗『あたしも貰いました』

 ラリィ=ル・レロ『こどもならあたしも産んでみたい』


「ラリィ=ル・レロさんって、たこさんウィンナーさん、好きなんですか?」


 ラリィ=ル・レロ『好きよ』


「でもなあ。私がこの世界で迷ってたのを最初に助けてくれたの、たこさんウィンナーさんだし、私も好意はあるよ」


 『修羅場か』

 『ラ波感』

 『よろしいならば戦争だ』


 ラリィ=ル・レロ『まず、結婚しよう。あたし、結婚したかったんだ』


「私だって結婚したかったわ!」

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