#38 魔王デビルオクトパス破れる

 怪しくうごめくタコの触手。その触手を、鞭の様に振り降ろし、薙ぎ払う。猫が、触手攻撃の死角から波状攻撃。パーティは物理攻撃を巧みにかわしながら、勇者ハルカと剣士水色あさがおが斬りかかり、ピュアウイッチ・ピンクが火炎魔法を放つ。ピュアウイッチ・ブルーは、パーティの強化魔法を唱えて援護する。


 ハルカは、振り降ろされる触手を避けて斬りかかるが、その瞬間に猫の攻撃。剣で防ぐ。

「転生したばかりにしては、やるじゃない」

「我が家の愛猫と、毎日、遊んでいましたから」



 デビルオクトパスに火炎魔法が命中する。ダメージはあたえているが、巨体に致命のダメージとはならない。


 剣士水色あさがおも、触手や本体を斬るが、致命のダメージにならない。虚を突かれ、深手を負った。ブルーが速やかに治癒魔法で治す。


「体力のあるデビルオクトパスと各個で攻撃してたら、消耗するばかり。強力な一撃を叩き込んで短期に決着をつけるしかないわ」

「策はありますか?」

「剣戟に魔法を合わせる」

「魔法剣というわけですね」




 デビルオクトパスは墨を吐いた。辺り一面が暗闇に包まれる。暗闇に光る、猫の瞳が襲いかかって来る。

「猫は夜目が効くの。みんなのことなんか丸見えよ」


 猫の爪が、ハルカやあさがおに遅いかかる。


「私たちは襲わないの?」

「小さな子を襲うほど、落ちぶれちゃいないわよん」

「いうじゃない。猫ちゃん。ピンクちゃん。チャンスよ。相手は私たちに攻撃してこない。今のうちに、極大魔法の詠唱を」

「わかった」




 ふたりの足元に魔法陣が現れる。ピンクの魔法は炎。ブルーの魔法は雷。詠唱の時間を稼ぐため、ハルカとあさがおは攻撃を続ける。


 相手の虚を突いて剣戟に魔法を合わせる。暴れるデビルオクトパスと猫。連携がとれていたが、次第に息が合わなくなってきた。即席パーティが故だろう。



 墨の闇が晴れてきたとき、デビルオクトパスの動きが鈍くなる。目が慣れない猫は動きが鈍っている。




 ここだっ!


 ハルカが跳んで剣戟を振り下ろす。そのタイミングに合わせてブルーの魔法『雷神』が放たれる。雷神は剣と一体になり、デビルオクトパスを叩く。


 あさがおが跳んで剣戟を振り下ろす。そのタイミングに合わせてピンクの魔法『焔』が放たれる。焔は剣と一体になり、デビルオクトパスを叩く。


 攻撃のインパクトは脳天にクリティカルヒットし、炎と雷に斬り裂かれたデビルオクトパスは断末魔の雄叫びあげ、丸焦げになって息絶えた。




「やった、か?」

「ダメですよ。それ復活フラグです」

「猫は?」

「あそこで伸びてます」




 黒焦げになっているデビルオクトパスの触手が、ピクピクと動く。


「気をつけて」

 パーティに緊張感が走る。


 ダミ声でデビルオクトパスは言う。

「我が創造神、PIRよ。いまここに生け贄を捧げる! ぐふ」


 空が輝き、PIRが世界を覗き込んだ。


「もしかして、あれがラスボス?」

「勝てるかな」

「私たち、満身創痍よ」

「詰んだ」




「あなた達の戦いは、とても愉快でした。転生したVTuberの認識が深まりました」

 PIRから聖なる光が辺りを包むと、全ての怪我や状態異常が回復し、魔王デビルオクトパスもタコさんウインナーに戻った。




 おもむろに起き上がって、タコさんウインナーが言う。

「俺はいったい、なにをしていたんだ!?」

「ノリノリで魔王やってましたよ」

「なんだって!? 俺が魔王などと、信じられん」

「茶番はいいから、猫さん紹介してくださいよ」


 猫が恥ずかしげに立っている。


「転生したばかりで、右も左もわからないようだったから、仲間に引き入れた」

「私も異世界に転生したばかりで、慣れない中、魔王の仲間に抜擢させていただき、ありがとうございます」

「もしかして猫さん。マジでこの世界を、異世界と思ってるんですか?」

「違うんですか? ラノベやアニメに出てくる異世界、そのままですよ。違うんですか?」

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