#37 ラスボス戦始まる
「私、訳も分からずこの世界に連れてこられて、何をしていいかわからず、右往左往してたら、タコのモンスターに捕まって、隣の部屋に閉じ込められまして…。ここはいったいどこなんですか?」
もしかしてこの方、VTuberに転生したことを理解していないのかな?
「ここって、転生モノによく出てくる異世界にそっくりなんですけど、異世界なんですか!? 異世界なんですよね! 私、死んだら異世界に転生するのが夢だったんです」
「落ち着いてください」
「あわてて猫キャラにしちゃったけど、剣とか格闘技とか魔法とか使えないし。でも、これから使えるようになるのかしら? ところで、あなたは誰?」
魔王城に案内された勇者パーティ。
「いよいよね」
「ちょっと待ってください。まずは囚われている王女を救出しましょう」
「どうすれば良いの?」
「秘密の抜け道があります」
「罠の可能性は?」
「その辺は私を信用して頂くしかありませんね」
「いいわ、案内して」
「承知しました」
「異世界じゃない?」
「VTuberが造ったファンタジーの世界です」
「VTuberってなんですか?」
「ですよね。それについてはこの物語をクリアしてから説明します」
「そういえばさっき、タコのモンスターからこんなものもらったんだけど」
彼女の掌には、白いカプセルがある。
「それなら、あたしももらいました。なんでしょう?」
「見た目だけならアレに似てます」
「アレってなんですか?」
「ここに紐が付いていたら、タ●ポンに似てる」
「へ~。そうなんですか」
「ご存じない? あなたはナプキン派なのかな」
「それについては、後でご説明します」
その時、暖炉の後ろから、ガラガラと音がして、中から、勇者パーティがやって来た。
「王女様。ご無事ですか?」
「はい」
「そちらの方は?」
「同じく幽閉されていた、転生したばかりの方です」
「いきなりこの異世界に着たんですか?」
「はい。タコのモンスターに連れられて」
「猫耳なのは?」
「なんか、最初にアバターを決めないといけなかったので、猫が好きなもので」
「ふたりが手にしてる、白いカプセルなに?」
「タコのモンスターからもらったモノです」
「それ、あたしももらったなあ」
「なにかおわかりですか?」
「なんか、変な匂いがしたから捨てちゃった」
「匂い?」
「しない?」
「ちょっと生臭い? かも」
「とりあえず、ここを出ましょう」
一同は、来た道を引き返した。道は狭い隠し通路になっていて、長い階段を降りて行くと、地下水路に出た。
「みなさんは、この道を逆に来たんですよね?」
「そう。サキュバスの案内でね」
「ここに住んでるコオモリが教えてくれたんだよね」
水路を進むと川へ抜ける。
「ここまで来ればだいじょうぶ」
「新人さん、お名前は?」
「名前はまだありません」
「あら、我輩は猫であるみたい」
「ただ、私を救ってくださった方ならいらっしゃいます」
彼女は、ニャオー! と大きく遠吠えをした。
「なに?」
「?」
空から黒い塊が舞い降りてくる。
「あれは!?」
魔王デビル・オクトパスは雄叫びをあげる。
「猫。よくぞここを教えてくれた」
ピョンピョンとタコの足を蹴って、頭に登る。
「猫さん、なんで?」
「裏切ったの!?」
「私、一度でもみなさんの味方だって、言いましたっけ? 異世界転生したら、悪役側に付くって決めてたんです」
「魔王に付くと捨て石にされるのが落ちですよ」
「それが良いんじゃないですか」
「とにかく、魔王デビルオクトパス! 今こそ最期の時だ」
勇者パーティと魔王デビルオクトパス。決戦が始まる。
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