#34 王女ミレー、タコの触手にさらわれる

 翌朝。


 四人はギルドを出て、街道を歩いていた。そこへ、昨夜、ピュアウイッチ・ピンクに因縁を付けてきた男と、その仲間が立ちふさがった。

「昨日はよくも俺様に恥をかかせてくれたな」

「それで、仲間を連れて待ち伏せ? ダサ」

「うるせー!」


 男達が襲いかかろうとした瞬間、疾風の如くあさがおが飛び出し、男のみぞおちに鞘が入る。仲間の一人はピュアウィッチ・ピンクの魔法で氷漬けになり、もう一人はばたりと倒れ、グーグーといびきをかき始めた。ピュアウイッチ・ブルーの睡眠魔法だ。


 『おいおい瞬殺だよ』

 『瞬殺で草』


「さ、気を取り直して行きましょう」




 魔物を倒しながら王都を目指す。


 途中、たこさんウィンナーの姿をしたしゃべるモンスターを倒した。メンバーは、そのことを、よくあるモンスター退治だと思って、気に留めることなくその場を後にした。


 まる焦げになったたこさんウィンナーの亡骸。


 『うまそう』

 『美味そう』

 『良い匂いしそう』


 優しく拾い上げるサキュバス。

「我が偉大なる創造神よ。罪も無く葬られた、この哀れなたこさんウィンナーの魂を御救いください」


 空がにわか曇り、神黒の穴が開くと、中からPIRが現れ、たこさんウィンナーを手に取ると、慈悲の目を注いだ。すると、たこさんウィンナーの身体は、みるみる大きく、どす黒く、巨大ダコのモンスターへ変貌した。




 王都に到着した三人は、さっそく、王に謁見した。王は、冒険者たちをねぎらうため、夜にパーティを開いた。パーティには、ピュアウイッチ・ピンクを含めた、他の冒険者たちも集められ、盛大に行われた。


「けっこうな人数がいますね」

「王都のギルドは国営だから、冒険者も集まりやすいのよ」

「でも弱い奴ばかり」

「シー! 聞こえたら喧嘩になるわよ。ただでさえふたりは、幼く見えるんだから」

「実力がすべて。歳は関係ない」

「そうだけど、波風立てないでね」

「でも、あの人は強そう」

「だれ?」


 ピュアウイッチ・ピンクが指した先に、すっとたたずむ勇者がいた。


 そこへ、王女ミレー自ら、冒険者の中に赴き、ねぎらいの言葉をかけて回る。三人の前にもやって来た。

「ようこそ王都へ」

「ミレー王女。パーティへお招きいただき、光栄です」

「こちらのお子さんも、パーティメンバーなのですか?」

「はい」

「そうですか…。年端もいかない子を冒険者にしなければならない現状を憂います」

「あたしは自分で冒険者になった。憂う必要は無い」

「どうもありがとう。あなたは強い子ね。お名前を教えてください」

「ピュアウイッチ・ピンク」

「そちらの子は?」

「ピュアウイッチ・ブルーよ」

「そう。がんばってね」



 ドカーン!


 爆発音と同時に地響き。黒煙が窓から沸き起こる。人々は、悲鳴をあげて逃げ惑う。黒煙の中から、巨大なタコの魔王『デビルオクトパス』が、頭にサキュバスを乗せて襲ってきた。

 冒険者たちが前に出て、魔法攻撃と剣戟で迎撃するが、圧倒な力の前で、次々と倒されてゆく。ピュアウイッチ・ピンクやピュアウイッチ・ブルー、水色あさがおも例外なく、歯が立たない。


 勇者が魔王・デビルオクトパスに斬りかかった。勇者は、デビルオクトパスの魔法や触手攻撃を巧みにかわし、魔王にダメージをあたえる。


「あの人、強い」


 ピンチに陥ったデビルオクトパスは、黒煙を吹いて会場の視界を奪う。その隙に、王女ミレーを抱いて、逃げてしまった。


「しまった!」


 王女を魔王・デビルオクトパスに連れ去られてしまった。




「勇者様。どうしますか?」

「魔王の根城を襲う」

「よかったら、あたしたちも勇者様のパーティに加えて欲しい。あたしは剣士。水色あさがお」

「魔法使い。ピュアウイッチ・ピンク」

「賢者。ピュアウイッチ・ブルーよ」

「あたしは勇者・ハルカ」


 四人は、魔王城目指し、歩み始めた。

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