#33 異世界といえば中世欧州風

春花はるか夏海なつみ秋月あきつき冬雪ふゆき●ライブ


「寒くなってきましたが季節はまだ秋! 秋は月が綺麗ですね! ニュースピリチュアル所属、春花はるか夏海なつみ秋月あきつき冬雪ふゆきです」


 『秋月~』

 『秋月~』

 『秋月』


「今度の冬コミで、『たにくしょくぶつ』さんのサークルに、ゲスト寄稿することになりました」


 『おお』

 『おめでとう』

 『早く見たい』


「いつもはBLなんですけど」


 『いつも?』

 『いつもは?』

 『いつも???』


「え? いつもなんて言ってませんよ。今回は時間がないので、カットを数枚、描こうと思ってます」」


 『今回?』

 『今回は?』

 『今回???」


「今回なんて言ってませんよ。みなさん楽しみにしててね」




 とげ蔵は、サークルのメンバーに、VTuberの春花はるか夏海なつみ秋月あきつき冬雪ふゆきに原稿を依頼した旨、話した。なにか、反対意見がでるかと思ったが、『ssawサワね』『ssawでしょ』と、既にsswaであることが既成事実として浸透していた。




たこさんウィンナー●ライブ


「今日は皆さんに、異世界へ転生してもらいます」


 『どうせたこのハーレムモノになるんだろ』

 『たこ以外女しかいないしな』

 『うらやま』

 『その触手でエッチなことするんでしょ!』

 『エロ同人みたいに!』


「おまえら落ち着け。メンバーから、転生するなら中世風異世界でしょう! と力説され、ステージを造りました」


 『力説w』

 『誰だ』


「さあ! 冒険へ旅立とう!」




 石畳の道を、中世の服を着た人々が行き交い、馬車が走り抜け、子供たちが駆ける。土壁の家には煙突があって、夕餉の準備に煙を空へなびかせている。空は西の地平から赤く染まりだした。


 かの空へ向かって街の目抜き通りを歩く、とんがり帽子をかぶった小さな魔法使いの少女がひとり。ギルドのドアを開けると、小さな冒険者に怪訝な顔をする輩が。てくてくとギルドのカウンターへ向かって歩いていると、すね毛が生え、土汚れでくすんだ野太い足がすっと、少女の足元に伸びる。ニヤリとする足の主。しかし、少女は足に目を向けることもなく、ひょいっと跳び避け、何事もなかったかのように、カウンターの前に立った。


 それを見ていたギルドのメンバーから失笑が湧き起こった。恥をかかされた男は、少女の肩を掴んだ。

「おい! ちょっと待て」

 顔を上げるピュアウイッチ・ピンク。

「なんでしょう?」

「俺に恥をかかせておいて、ただじゃすまさねぇ」

「あたしは丸太を跳び越しただけですが?」


 周りからまた、失笑が湧く。


 男が右腕を振りかざした。その腕をがっしりと握った女騎士・水色あさがお。

「止めときなさい。あなたの敵う相手じゃないわ」

「こんなガキ、一発で倒してやるぜ」

「言っておくけど、あたしはあなたを助たのよ」

「なんだと」

「殴りかかる前に、丸焼けにされてたわ」


 少女の持っていた杖に、炎の魔法が蓄積されている。その魔法がどれほどの威力を持っているか、瞬時に悟った男は、忸怩たる思い出その場を離れた。


「助けてくれてありがとう」

「さっきも言ったけど、私が助けたのは、あっちの男」

「名前を教えてください」

「水色あさがお。剣士よ」

「ピュアウイッチ・ピンク。魔法使いです」

「ピュアウイッチさんは、ソロ?」

「いいえ」

「仲間がいるの?」

「はい」

 ギルドのドアが開くと、ピュアウイッチ・ピンクと同じくらいの少女が、賢者の衣を身にまとって入ってきた。

「へ~。ただ者じゃない感じね」

 賢者が歩み寄る。


「私たちの仲間になりたいの?」

「是非とも」

「私たちのパーティは魔法中心だから、剣士が仲間になってくれるのはありがたい」

「それじゃ決まりね。水色あさがおです。よろしくお願いします。賢者様」

「ピュアウイッチ・ブルーよ。よろしく」

「今夜はこのギルドに泊まるんでしょう。一緒に夕食でもどうですか」

「よろこんで」




 翌朝。


 三人はギルドを出て、街道歩いていた。そこへ、昨夜、ピュアウイッチ・ピンクに因縁を吹っかけてきた男と、その仲間が立ちふさがった。

「昨日はよくも俺様に恥をかかせてくれたな」

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