#25 レースは最終局面へ!
異世界の長いトンネルを抜けると、ジャングルだった。
凍える氷山地帯から一転、蒸し暑い風がドライバーを包み、程なく、全身から粒の汗が湧き上がった。
鬱蒼と生い茂る熱帯の樹々。隙間から射す陽が道を照らす。所々に沼地があって、足を取られてスピードが落ちる。
「沼地をかわしながら走れってことね」
ピュアウイッチ・ピンク●ライブ
「氷山地帯の次はジャングルです! この温度差を耐えられるか!?」
「温度差だけじゃない」
「なんですか? ピュアウイッチ・ピンクさん!?」
「あたしが好きな生き物が出てくる」
「好きな生き物!?」
「観てのお楽しみ」
「生き物がなにかわかりませんが、先頭のさくまどろっぷを観ましょう!」
巧みなドライビングテクニックで、沼地を避けながら走るさくまどろっぷに、突然、ドシンッ! ドシンッ! と衝撃が襲い、バギーが跳ねる。
「今度はなに!?」
降り注ぐ木陰を遮りながら、何かが近づいてくる。影は樹々を揺らしながら、ざわめく。突然、恐竜が姿を現し、さくまどろっぷに噛みついて、振り回し、放り投げた。
「きゃ~~~~~!」
乗っていたバギーは、樹にぶつかって止まった。
『ジュラシック・パーク』
『ティラノサウルスか』
『ゴジラ』
『草』
放り投げられたさくまどろっぷは、血飛沫を舞いながら、四肢がちぎれ、首があらぬ方向へ曲がり、樹にぶつかって、落ちる。
『オワタ』
『タヒた?』
『草』
傷はすぐに治る。
「イタタタ」
「トップを独走していたさくまどろっぷが、まさかの離脱」
「恐竜大好き」
続いて、
とげ蔵『春花がんばって!』
とげ蔵が応援してくれてる。がんばるぞい。
沼地を慎重に避けながらバギーを走らせたが、恐竜に食われる。
「キャー!」
3番手にやって来たのは、可愛美麗だ。彼女は、スピードを出しつつも、巧みに沼地を避け、さらに、恐竜の攻撃をドライブテクニックで華麗にかわし、トップに躍り出る。
ジャングルを抜けるとそこは、高層ビルの林立する、マンハッタンだった。
「トップで最終ラウンド『マンハッタン』に来たのは、可愛美麗です!」
「恐竜かわされた。悔しい」
マンハッタンの道には、車や歩行者が多数、行き交い、混雑している。道が多数に分かれ、交差点には『←』『↑』『→』の道路標識があって、どの道が正解かわからない。
「どの道行ったら良いの!?」
「マンハッタンは多数の道が碁盤目状に張り巡らされています。この道を効率良く走ってゴールするのが最速。逆にいえば、迷っている相手を抜き去るチャンスでもあります!」
『信号があるぞ』
『車の量、えげつない』
『タワーが見えた』
『GHOULって書いてある』
「そうです! タワーがゴールです! このレースを制するのはいったい誰だ!?」
最下位の水色あさがおは、沼地にはまっている。
「あたし、車運転するの初めてなんですけどー」
春花と、さくまどろっぷが、マンハッタンにやって来る。
「車多い!」
とげ蔵『裏路地へ逃げるんだ』
裏路地は、バギー一台が走れる程度の幅しかないが、人や車の往来がないので、走りやすい。
それを見ていた、さくまどろっぷが続く。
「これは、裏路地をぬって走るのが近道とみた」
さくまどろっぷは、路地を途中で曲がった。春花は、表通りに飛び出した。そのとたん、走ってきた車とクラッシュ。バギーはスピードを失って、一定時間コントロールできなくなる。
「なるほど。交通ルールは守りましょうって訳ね」
沼地からなんとか抜け出した、水色あさがおは恐竜に食べられていた。
「痛ーい!」
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