#23 黄砂を蹴ってバギーレース始まる

 砂漠を遥か彼方、地平の果てに目を向け、ふたり乗りバギーが、砂煙をあげながら疾走している。いつか辿り着くであろうオアシスを求めて、春花はるか夏海なつみ秋月あきつき冬雪ふゆきはハンドルを握っていた。助手席にはPIRが座っている。


 太陽は天頂にあって熱線を照らし、熱く乾いた風が吹き、ふたりを焦がす。乾いた砂はタイヤをすくい、空転したり、滑ったり、せわしなくハンドルを切る。


 砂丘を越えると、また新しい砂丘の嶺が見え、またそこへ向かって走る。車の轍だけが、砂漠に跡を残す。陽炎が時々、オアシスに見える。汗が吹き出て、喉が渇く、苦しい状況だが、熱中症で死ぬ心配はない。




「どこまで行くんですか?」

「オアシスが見つかるまで」

「オアシスってなんですか?」

「砂漠に突如、現れる楽園」

「砂漠の地下に、水を通さない地層があり、地層の露出した場所から地下水が噴出した泉を中心に、小さな動植物の生態系が確立した場所ですか?」

「知ってるじゃん」

「オアシスには、他にも意味があります」

「例えば?」

「1991年にイギリスで結成されたバンド」

「それは知らないなあ。」

「憩いの場」

「その意味が、近いかな」




「今回のゲームはなんですか?」

「いろんな地形を走って順位を競い合うレースゲーム。今回はね、各自が創ったゲームを、それぞれプレイしあうスタイルなの。ただ、7歳のピュアウイッチ・ピンクちゃんひとりだけで創るのは難しいから、たこさんウィンナーとペアね。今、走っているのがそれ」

「7歳が発想したとは思えない、リアルな砂漠ですね」

「そこはタコさんのフォローじゃない」


 モニターに、先行するバギーが映った。

「やっと追いついた。さくまどろっぷさん」




 さくまどろっぷも本気でゲームを楽しんでいる。

「悪いけど、車の運転歴は40年以上なの」


 モニターには、先頭にさくまどろっぷ。2位に春花&PIE。3位に水色あさがお。僅差4位に可愛美鈴がつけている。


 砂煙をあげなら疾走する、さくまどろっぷのバギーを視界にとらえる。

「さすがですね。でも、負けませんよ」




ピュアウイッチ・ピンク●ライブ


「さあ始まりました。ピュアウイッチ・ピンク、プレゼンツ。ニュースピリチュアル・ラリーです。ピュアウイッチ・ピンクさんはコースの設計をしました。コンセプトはなんでしょう?」

「レースゲームってファンタジー多すぎなので、実在の場所でレースをしたかったです」

「今回、参加されませんでしたが?」

「創った人が参加するのはアンフェアー」

「さすが、正義の味方。魔法少女ピュアウイッチ・ピンクさん」

「あと、デバッグで散々、プレイしたから、もういい」

「メタい発言が出たところで、レースを見てみましょう」




「現在、先頭を走るのは、さくまどろっぷ。追うのは、春花&PIRコンビ。ちょっと遅れて水色あさがお。僅差で可愛美麗が追っています」


「やっと追いついたよ。さくまどろっぷさん」

「ゴールド免許とはいえ、ペーパードライバーごときが」


 さくまどろっぷは、春花のバギーに体当たりする。


「くっ!」


 逆にバギーをぶつける。


「わかってないね」


 砂丘の稜線にさしかかったとき、春花のバギーを蹴落とす。春花のバギーは、ゴロゴロと砂丘を転げ落ちた。


 自分を中心にして、地平線がグルグル回転して、逆さまになって止まる。バギーから履い出て、舌打ちをする。

「クソ! バギーを起こして、追うわよ!」

「了解しました」

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