#22 春花、身バレする
知名度が広がると、自然、中の人探しが始まる。あのサークルの作者に似てるとか、このサークルの作者に似ているとか。作品の画像をアップして、比べ検証する者も現れはじめ、とうとう、真実にたどり着いた者がいた。
サークル名『たにくしょくぶつ』といい、『こぴあぽあ』や、『黒王丸』、『アロエ』などといった同人誌を販売していた、壁サークル。
作者の名は『
配信中にそれを指摘されても、当の本人は、当然、否定する。しかし、それがサークル仲間の、とげ蔵の目に留まった。
とげ蔵は回顧する。彼女の屍を見た時のことを。
あれは、夏コミで売る同人誌の締め切り間際だった。毎日、取り合っていた連絡が、突然、途切れた。LINEにも、メールにも、電話にも出ない。おかしい。私は警察に通報して、管理人に鍵を開けてもらい、中に入った。猛烈な腐臭が鼻を突いた。そこにいたのは、タブレットに突っ伏して死んでいた、ssawだった。
風の噂で
なんとなく、その配信を見た。観ながら確信した。これはssawだと。アバターは変えているけど、声と話し方はそのまま。筆のタッチもそのまま。中学生の時、BLで意気投合し、お互いに絵を描いて、見せ合い、意見を交換する。時に優しく、時に厳しく。喧嘩もしたね。
涙が溢れ出てきた。モニターを抱えて嗚咽したが、とても嬉しかった。ssawが生きている。会える。話せる。この世界で。
春花は、次の配信で何をしようか考えながら、Xのポストを眺めていた。そのとき、懐かしいアカウントが目に飛び込んできた。
とげ蔵『ファンになりました』
とげ蔵だ。中学の頃から一緒に漫画を描いてきた、親友。
バレた? ごまかした方が良いのか? どうする? 全身から冷や汗が流れる。
とげ蔵は、それ以上、ポストしない。バレてない? そもそも、バレたからといって、なにか問題でもあるの? ペナルティはないの? あったとして、それはなに? そもそも、あたしをサイバー空間に閉じ込めておいて、本当に死にたくなければVTuberをやれって、あんた、何様?
汗に変わって、大量の涙が溢れ出でてきた。止めどない慟哭。号泣。会いたかったよ。とげ蔵。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます