#19 PIRデビュー

PIR●ライブ


「みなさん、はじめまして。今回、ニュースピリチュアルからデビューした、PIRピアです。『Possibilities』『Infinity』『Robot』の頭文字をとって、PIRです。ピアって呼んでね」


 『はじめまして』

 『PIRちゃん初めまして』

 『よろしく』

 『デビューおめ』


「名前の意味は、『無限の可能性をもったロボット』です。創られたばかりで、右も左もわかりませんが、みなさんの手で導いてください」


 『導きます』

 『マジ導きます』

 『お手をどうぞ、お嬢さん』


「さっそくお願いがあります。私にして欲しいことを言ってください。なんでもいいです」


 『ん?』

 『ん?』

 『ん? 今なんでもって言ったよね』


「はい。なんでもします」


 『スリーサイズ教えて』


「バスト84センチ。ウエスト63センチ。ヒップ86センチです」


 『身長体重は?』


「身長158センチ。体重50キロです」


 『平均的?』

 『普通だな』

 『カップ数は?』


「ブラジャーをしたことがないので、わかりません」


 『ノーブラなのか』

 『ハアハア』


「他にありますか?」


 『声が合成音声みたい』


「ロボットなので、声は合成しています」


 『ボカロうまそう』


「今度、歌ってみます」




 配信を見ている春花はるか夏海なつみ秋月あきつき冬雪ふゆきは、彼女が自分の前に現れた時のことを思い出していた。


 突然、現れ、物静かな合成音声で、VTuberに転生したので、ニュースピリチュアルに入れて欲しいと言われた。


「もちろん。大歓迎よ。お名前は?」

「まだ、ありません」

「そう…。とりあえず、みんなに紹介するね」


 ニュースピリチュアルのメンバーが集まって、自己紹介する。

「よろしくお願いします」


「アバターはロボットなの?」

「はい」

「だったら、ロボットらしい名前がいいかしら?」

「おまかせします」

「そう言われても、今すぐには思いつかないわね」

「みんなで考えましょう」


 終始、無表情で、こちらが訪ねたことには明確に答えるが、自分から発言することはない。


 内気な娘なのかな?


「設定は?」

「成人日本人女性の平均的な体格に造られました。それ以外は、ロボットであることだけです」

「もうちょっと作り込みたいわね」

「みんなで考えよう」




 そうやって、彼女のキャラクターはみんなの手によって創られた。あとは彼女しだい。だけど、なんか引っかかる。


 彼女は、自分のことを『造られた』と言った。今まで、転生したニュースピリチュアルのメンバーは、みんな、前世の話をした。話したくないのだろうか。ピュアウイッチ・ピンクちゃんですら、最近、学校に通っていた頃の話をするようになった。


 詮索は野暮だ。温かく見守ろう。

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