#14 空中戦、始まる

 水色あさがおのデビューから程なく、春花はるか夏海なつみ秋月あきつき冬雪ふゆきは、メンバーを集めた。




「どうしたの? 急にみんな集めて」

「みなさん、この世界をどう思いますか?」

「どうって…」

「いまさらだな」

「このあいだ、海水浴をしました。夏祭りをしました」

「それで?」

「全て、みんなで造ったものです」

「だね」


「具体的に想像できるものなら、実現可能なんです。そこでみなさん。今、息をしていますが、息を止めて苦しいですか?」

「いや。試したことあるが、いくらでも止めていられる」

「あたしたちが立っている地面。ジャンプすれば着地します。重力を感じています。これも、具体的な想像で、コントロールできるのではないか? あたしは考えました」




 春花は目を閉じ、両手を広げると、やがて、ゆっくりと浮き上がった。他のメンバーから、驚きの声が上がる。


 静かに目を開くと、両手を飛行機の翼のように広げたまま、ゆっくりと、数メートルの高さを飛び回った。


 着地して、言う。

「仮想空間に取り込まれた人が飛ぶ映画があったじゃないですか。要は、あれと同じだと思うんです。飛んでいる自分の姿を、具体的に想像するんです。今はこれが精一杯ですが、練習すれば、もっと速く、自由に、飛べるようになれると思うんです。みんなでやってみませんか?」


「飛ぶって発想はなかったな」

「でも、楽しそう」

「やってみる」


「やりましょう!」




 みんなで、空を飛ぶ練習をはじめる。やはり、若いピュアウイッチ・ピンクの上達、めざましく、ビュンビュン飛び回れるようになった。


 これは、ゲームになる。


 海水浴の時に造った海岸を拡張し、半径2キロほどの島を造り、岩礁や森、岩山を配置。みんなでゲームのアイデアを出し合い、足りない部分は、サイバー空間からデータを取り寄せ、立体的に動き回れるステージを完成させた。




 今、ここに『宝争奪バトルロワイヤル』が開幕する。


 春花とたこさんウィンナー。可愛美麗と水色あさがお。さくまどろっぷとピュアウイッチ・ピンクがそれぞれチームを組み、島に造られた岩山の頂上。祠に祀られた神器を争奪する。武器や魔法により妨害あり。相手を打ち負かし、いち早く神器を獲得したチームの勝ちだ。




「さくまさん、魔法少女のコスプレですか」

「今の私は、ピュアウイッチ・ブルーよ」

「ピンクちゃんと対にしたデザインですね」

「さっき、変身バンク撮ったんだけど、観る」


 変身バンクが流れる。一瞬、デフォルトの服が破け散って、全裸が映り、砕け散った服の破片が再構築して、ピュアウイッチ・ブルーの衣装になる。


「昔、キューティハニーってアニメがあってね。その変身バンクがこんな感じなの」

「さすがに、これは流せません」

「そう? 聖なる光があればいけるでしょう」




 可愛美麗と水色あさがおは、黒いマントに黒い魔女帽子。箒を持っている。

「こちらは、魔法使いですね」

「はい」

「魔法も勉強した」

「魔法、使えるの?」

「具体的に想像したモノは実現可能。アニメやCGを参考にして創った」

「怖いな~」

「だいじょうぶ。ちょっとぐらいなら痛いだけ」

「人を殺すようなことはしないでよ」

「善処します」




 春花は、背中にジェット噴射器のついた飛行装置だ。

「想像で飛ぶことができるんだから、ジェットエンジンは必要ないんじゃない?」

「具体的な想像がジェット噴射なんです」

「そういえば、たこさんが見えないけど」

「たこさんならここです」


 春花が髪をかきあげると、たこさんウィンナーが現れ、肩に乗る。


「使い魔みたいね」

「たこさんには、あたしのナビゲーターをしてもらいます」




「それじゃ、始めましょうか」

「Are You Ready?」

「GO!]


 全員、一斉に空へ舞い上がる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る