#05 火星人はタコ、お弁当のおかずはウインナー
ヴォン!
「なんか、見たことがあるような、ないような風景」
その時、足の下がモゴモゴと動く。
「ん?」
足を上げると、赤いタコさんウインナーを踏んでいた。
「なにこれ!?」
タコさんウインナーは、ぴょんと立ち、怒りを爆発させる。
「いきなり現れたと思ったら、いきなり踏んずけやがって!」
「ごめんなさい」
見た目、お弁当に入っている、タコさんウインナーなんだけど。大きさもリアル。
「はじめまして。数日前からVTuberとして活動させていただいてます、
「はるか…、なんだって?」
「
「ながいな」
「あたしの好きな、春夏秋冬から名付けました」
「俺は、見たまんま。たこさんウィンナーだ」
「たこさんウィンナーさんは、どのくらい活動なさっているんですか?」
「一週間ぐらいだな」
「さくまどろっぷさんと同じぐらいですね」
「ところでよ、俺様が見上げてると疲れるから、おまえ座れ」
「はい」
しゃがんでも、高さはさほど縮まらない。
「しょうがねぇな。俺が岩の上に昇ってやる」
ぴょんぴょんと段差を飛び跳ねて、春花と同じ目線の高さまで昇る。
「こうやってみると、なかなかべっぴんじゃねぇか」
「べっぴんってなんですか?」
「可愛いって意味だよ」
「ありがとうございます」
「ところで、どうしてたこさんウィンナーさんは、たこさんウィンナーをアバターにしたんですか?」
「転生した時に、人非ざるモノになりたかったんだよ」
「それで、火星人ですか」
「火星人っていったらタコだろ」
「そうなんですか?」
「昔のSF小説や映画じゃ、そういう風に描かれてたんだよ」
「へー、そうなんですか。で、なんでウインナー?」
「お弁当っていったら、のり弁に卵焼きとタコさんウインナーっていうのが定番だろ」
「火星にタコ。タコはウインナーと。大きさも忠実ですね」
「4.3センチな」
「身体に、おこげがあるのもリアルで良いと思います」
「おお! わかってるじゃねえか」
「今回は、なにようだ?」
「ひとりぼっちでさみしかったので、話し相手になってください」
「なんの話する。察するに、かなり世代差がありそうだぞ」
「たこさんウィンナーさんは、生前は、なにをされていたんですか?」
「SEだな」
「システムエンジニアですね」
「そういうおまえは、なにやってたんだ」
「同人漫画を描いてました」
「コミケか」
「そうですね」
「儲かってたか?」
「同世代の派遣社員よりは稼いでたと思います」
「ちゃんと税金払ってたか?」
「年金も払ってましたよ」
「他に転生したVTuberはいないんですかね」
「どうだろうな」
『 現在までは、4名です 』
「意外と少ないですね」
「100人ぐらいいたら、事務所立ち上げられるな」
「それですよ! 事務所作りましょう。個人勢って、なかなか人気、出ないじゃないですか。ホロライブや、にじさんじみたいに箱推ししてもらうんです」
「それにしても、もうちょっと人数が必要だな」
「そうですかねぇ」
「まあ、アイデアは悪くない。事務所立ち上げるなら、参加するぜ」
「やった! たこさんウィンナーさん、ありがとうございます」
「じゃあな」
「さようならタコさんウインナー」
ヴォン!
春花は、モザイクになって空中へ消えて行った。
その姿を見送って、火星人は思う。
「転生者、集めて、事務所立ち上げか。さて、どうなることやら」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます