第20話「ホトメさんの帽子」


 私はある日、一人の旅人さんと出会いました。


 彼女の名前は”ホトメ”さん。彼女は私と同じく托卵の帽子を使いながら旅を続けています。


 ホトメさんの帽子には”縁のある人と再会できる”不思議な特製があります。今回はそんなホトメさんの帽子のお話です。



   ○


「しかし、ホトメさんの帽子は不思議ですね。昨日は逆の方向へ向かってお別れをしたはずなのに、今日こうして再び出会った……。もしかして、ホトメさん意図的に私に会っていませんか?」


「いやいや違うって!私本当にククースと今日こうして会おうだなんて考えてなかったから!お願いだから私をストーカー呼ばわりしないで〜〜」


 ホトメさんはまたしてもストーカー疑惑をかけられて半泣き状態になっていました。というのも、私は最初の頃あまりにホトメさんと偶然に再会するので、てっきりホトメさんは私のストーカーか何かだと勘違いしていました。

 まあ結局私がホトメさんと再会するのは、彼女の托卵の帽子によるものだったのですけれど……。


 しかし冷静になって考えてみると、帽子の特性と言われてもあまり腑に落ちはしません。それに托卵の帽子に特有の効果があるのなら、私の帽子にだってあるはず。でも私には心当たりがありません。


 そもそも、托卵の帽子にはそのような特有の効果など無いのではないでしょうか?しかしそれだとホトメさんが嘘をついているということに……。


 ここにきてまたしてもストーカー疑惑が再浮上してきました。


「……。」


「うぅ……ククースが疑いの目で私のことを見てる。」


 ホトメさんのこの表情を見ると、とても嘘をついているようには見えませんね。


 仕方ありません。私はとあることを実行することにしました。


「ホトメさん。少しだけ私と帽子を交換しましょう。」


「えっ?良いけど……」


 私はホトメさんと托卵の帽子を交換しました。そして私はホトメさんと一緒に帽子を被ります。ちなみに托卵の帽子は互いに被っている状態だと作用しません。


「これで私が今まで出会ったことのある人と再会したら、この帽子の特性について認めましょう。」


「……もし再会しなかったら?」


「その時はその時です。」


 私は帽子を被ったまま歩きだします。ホトメさんはまるで祈るかのように手を合わせ私の後についてきます。


 さて、果たしてこの帽子の効果は本当なのでしょうか?そしてもし私が再会できるなら、一体誰と再会できるのでしょうか?できれば私の親友の”なーちゃん”か、従兄のはとくんが良いですねぇ〜…なーんて。


 私は少しワクワクしてきました。

 そしてしばらくして私はとある人物と再会しました。


 さて、私は一体誰と再会したでしょうか?




「ククースお姉ちゃぁぁぁああぁぁん!!!」


「げっ!?ツバサさん!?」


 そう、私が一番再会したくない人物ナンバーワンの家出少年”ツバサ”さんです。(第十話登場)


「こんな所でまた会えるなんて……。やっぱりククースお姉ちゃんと僕は結ばれてるんだよ〜!!」


 アンタは帽子うんぬん関係なくいつも会ってるでしょうに。


「結ばれてるわけないでしょ!!来ないでください!!」


「へぇ〜ククースも隅に置けないね〜」


「何言ってるんですかホトメさんも!」


 私は帽子をホトメさんに押し返して、ツバサさんから逃げるべく走り出しました。



 結論としてホトメさんの帽子にはちゃんと”再会できる”特性があるようでした。まあ再会した人は、一度帽子無しでも再会したツバサさんだったので一概にも帽子の効果によるものとは言えませんけど。


 正直私は別にホトメさんがストーカーでも、帽子の効果で何度も再会できていようと別に良いです。


 だって私はホトメさんと再会することに、一切嫌な感情を抱いていませんから。



「ククースお姉ちゃん、今回の僕の家出の理由はちゃんとしてるんだよ!だから今日こそククースお姉ちゃんの家出について行かせてよ!」


「あなたがどんな想いで家出をしようと、私の知ったこっちゃありません!!」





【あとがき】

 毎話10話ごとに特別な話を書こうと思い、今回は第一章完結ということで本編に出てきた”ホトメ”さん関連の話を書きました。ついでに第十話に登場したツバサも再登場させています。

 ちなみに余談ですが、本編でのホトメさんとククースのストーリーは私が好きな曲”hide and seek (ChouCho)”の歌詞をモチーフにしています。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る