第18話「堅苦しい家族」


「お帰りなさいませ。」

 

 いつも通り托卵の家族の家にお邪魔すると、私はいきなりそう言われました。

 

 一瞬間違えて旅館にでも入ってしまったのかと思いましたが、ここはどう見ても一般家庭のお家です。それに私は今この家の家族のはずです。それなのにいきなり敬語……?


「た、ただいまです。」


「ただいまではありませんよ?ただいま戻りました、です。」


「た、ただいま戻りました。」


 私の言葉遣いを正すのは、目の前に立っている私より年下の女の子。同じ家族、まして私の妹という立場なのに、こんな堅苦しい言葉遣いなのは違和感しかありません。


 私はとても困惑していました。



 〇


「お帰りなさいませ、ククース様。」


「お母様、まもなく晩御飯のお時間です。」


「すぐに準備します。」


「よろしくお願いします。」


 彼女とお母さんの会話もやっぱり変でした。いつもの家族なら「ねえお母さん晩御飯まだ〜」だとか「ちょっと待っててね。今から準備するから」などと極めて砕けた口調です。


 一体何故にこのような言葉遣いなのでしょうか?


「……ただいま。」


 私が色々と考え込んでいると、家にお父さんとお爺さんが帰ってきました。


「お帰りなさいませ。」「お帰りなさいませ。」


 2人はまるで旅館の接待かのように深々とお辞儀をしました。立派な袴を着て、威厳のある風貌のお父さん達はそんな2人のことを横目に通り過ぎます。


「ククース。挨拶は無しか?」


「え、あ、お帰りなさいませ。」


 私は見様見真似でお帰りなさいと言いました。すると彼らは血相を変えて私のことを怒鳴り散らします。


「なっとらん!!お前はこの家の恥だ!!ちゃんと挨拶が出来ないのなら出ていけ!!」


 急に罵声を浴びせられて、私は萎縮します。お母さんと妹さんは冷ややかな目で私のことを見ていました。


「……ご、ごめんなさい。」


 私は半泣きになりながら家を出ました。


 その後の彼らのことは私の知ったこっちゃありません。





 【あらすじ】

  立派な家系の血筋を持ってそうな、礼節を重んじる家族に巻き込まれてしまったククースのお話でした。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る