第14話「背の低い父親」


 私が今日泊まらせて頂いた托卵の家族は、少々珍しい個性がありました。それはあまり良い個性とは言えないかもしれませんけど、面白かったのでお話します。


 それは私が家に入った時でした。

「おかえり。」


 玄関の中には今回の托卵の家族のお父さんがいました。私はそのお父さんの姿を見て、少々驚きました。


「……なんだよククース。そんなジロジロ見んじゃねーよ。」


 私が驚いた理由、それは目の前のお父さんの身長が私よりも低かったからでした。私もあまり身長が高い方では無いのですが、彼の身長は私の身長を遥かに下回っていました。


「どうしたの?」

「なんかあった?」


 驚きのあまりしばらくその場に固まっていると、家の奥から2人の男女が現れました。私は今度はその2人のことを見て再び驚きます。

「……高い。」


 そう、今度は奥からでてきた息子さんとお母さんの身長がものすごく高身長なことに対して私は驚きました。私は彼らに見下ろされています。彼らの身長が規格外なのも相まって余計にお父さんの身長が低く感じます。


「あ、もしかしてお前俺の身長のことバカにしたいんだな!?そうだろ!」


「え、あいや、別にそう言った訳では……」


 私の失礼な反応に、お父さんはとてもご立腹の様子でした。私は気まずくなり、1歩後ずさりをして距離を取ります。しかしお父さんは今にも噴火直前でした。


「し、失礼しましたー!!」


 私は怖くなって逃げ出しました。

 3人は逃げる私の姿を驚いたような表情で見送っていました。


 〇


 次の日、私は別の托卵の家族の家で夜を過ごし、次の街へ向けて出発しました。そして私はふと昨日の身長差が凄い家族の家の前を通り過ぎました。


 すると庭の方から何やら声が聞こえました。


「父さん行くよ!」


「おう、ばっちこーい!」


 そのような声が聞こえてきたその時です。私が歩いている道と庭との間にある塀を飛び越えて、野球ボールが私の頭に直撃しました。

「いてて……」


「あ、どうもすみません。うちの息子が」


「なんだよ。父さんが取らないのが悪いんだぞ。」


「なんだと!?俺が身長が低いの知ってるくせに、高いボールを投げてきたお前が悪いんだろ!?」


 2人は塀の向こうで喧嘩を始めました。

 私はボールを片手に塀の向こうを覗き込みます。


「アハハ、ごめんって」


「許さんぞー待て待てー!」


 そこには喧嘩しながら、何故か嬉しそうな親子の姿がありました。そこには身長の差なんて関係ありません。彼らはそこら辺の親子と何ら変わりのない、普通の仲良し親子なんだと私は思いました。


「……。」


 私は無言でボールを彼らの方へ転がし、再び歩き始めました。


 その後の彼らのことは私の知ったこっちゃありません。

 





【あとがき】

同じ学校の同期から募集した家族ネタの1つ。いつかTwitterで家族ネタを募集して、SSを書いてみたいですね。

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