第13話「忘れ物」
「あっ!?ダイちゃんパソコンわすれてる!!」
昼寝をしていた私は、お母さんの大きな声によって起こされました。お母さんはパソコンの入った黒いカバンを片手にスマホで電話をかけていました。
「ダイちゃん今どこ?……うん、うん。分かった。そこまでなら車で行ける。今からククースと一緒に行くからちょっと待ってなさい!」
……何だか大変そうですね。
「ククース!今から急いでダイちゃんの学校に行くから、ククースもついてきて!!」
「……え?」私は寝ぼけていたので反応が遅れました。
「良いから!早く!」
私はお母さんに引っ張られながら強引に連れていかれるのでした。
曰く、今回の托卵の家族であるパソコンを忘れたダイさんの学校では今日、重要なプレゼンテーションが行われるそうです。
なのにダイさんはうっかりパソコンを家に忘れてしまいました。しかも話を聞くところ、彼は今まで何度もパソコンを忘れているのだとか。懲りないですね。
「もう怒りを通り越して、まずはいかに何事もなく済ますかを考えるようにしてるの。」
彼のお母さんは強いですね。
彼女は一切戸惑っている様子もなく、極めて冷静でした。きっといつも同じようなことが頻繁に起こる故、対処法を熟知しているのでしょうね。
車で猛スピードで走っていると、お母さんのケータイが震えました。
「ククース!出て!」
「はいっ!」
私はケータイを託され、電話に出ました。そして電話の内容をお母さんに伝えます。
「もう次の電車に間に合わないから、一緒に乗せてくれだそうです!」
「よしっ!」
お母さんはハンドルを力強く握りました。
……なんというか、すごく頼もしいですね。
そして数分後、駅で待っていたダイさんを車に乗せ、学校へと向かいます。彼の膝の上には例のパソコンがありました。
「お母さん、本当に申し訳ねぇ。マジで。」
「とりあえず間に合いそうで良かったわ。もう次からはこのようなことにならないように気をつけるのよ。」
「おう……いやーマジで不甲斐ねぇ……あーぁ……」
ダイさんは深く反省している様子でした。お母さんはそんな彼を優しくなだめています。
全く怒ることなく。
お母さんは極めて冷静でした。
「まあ社会に出たらこんなふうに済まないからね。こうやって若いうちに何とかなるぐらいの失敗を重ねて、もう二度と同じようなことが起きないようにしなさい。」
「……ああ。今回は本当にごめんなさい。」
こうして何とか忘れ物を届けることに成功し、ダイさんはバッチリプレゼンテーションを成功させました。
「はぁ……本当に世話が焼けるわ。」
「お疲れ様です。」
帰りの車の中で、お母さんは安堵するのでした。
〇
「ただいま。」
夕方、ダイさんは家に帰ってきました。
「おかえり……あら?それは?」
彼の片手にはシュークリームの入った紙袋がありました。ダイさんは少し照れくさそうにそれをお母さんに渡します。
「はいコレ……今日は本当に助かったよ。やっぱりお母さんには頭が上がらないや。」
「ダイちゃん……」
「いつも迷惑かけてごめんなさい」
お母さんは「良いのよ」と言いながら彼の背中をさすりました。こうして今回の托卵の家族の忙しない一日は終わりました。
お母さんはダイさんの買ってきてくれたシュークリームを美味しそうに食べていました。
次の日、わたしはいつも通り彼らの家を出ていこうとしました。私が出る頃には、ダイさんはもう家を出た後でした。
その時です
「ダイちゃん!!弁当忘れてる!!」
「あーやべっ!!」
「もう!あれほど忘れ物はしないでって言ったのに!!」
私の背後では昨日と同じような光景が繰り広げられているようでした。
まあ、私の知ったこっちゃありませんけど。
【あとがき】
忘れ物をしたことから、忘れ物を届けてもらう流れ。そして帰りにシュークリームを買って帰る描写。この話の90%がほとんど実話。今日自分と母との間で繰り広げられたノンフィクションです笑
今日重要なプレゼン発表があったんですけど、ついうっかりパソコンを忘れてしまったんですよね。非常にピンチな状況に陥ってしまった私でしたが、母が急いで届けてくれたので助かりました。ちなみに次の電車がなかったのも本当で、お母さんには学校まで送って行ってもらいました。
私のお母さんは今回の話に出てくるお母さんとほとんど同じで、とても冷静でした。お母さん曰く、それは私が何度も忘れ物を繰り返しているから、こういうことには慣れてしまったからだそうです。いやー本当に申し訳ないです。
ちなみにこれは帰りの電車で執筆しています。その証拠に私は今シュークリームの入った紙袋を持っています。
家に帰って、お母さんにこのシュークリームを手渡して、改めてお母さんに謝罪しようと思っています。
お母さん、いつもごめんね。
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