第12話「お弁当」
私はいつも色んな家族を転々としているので、家族によって異なる食文化によく驚かされています。
和食と洋食で異なっているのを始め、場所によっては同じ食べ物でも食べ方が異なる家もあったり、他の家庭では絶対に食べないようなものが食卓に出たり、家庭によってそのカタチは様々です。
私はてっきりどの家庭も同じようなものを食べていると思っていたので驚きました。改めて私の世界は狭かったと思わされます。
家出をしてから私は少し自分の視野が広くなったように感じています。良くも悪くもね……
〇
私が家出をしたての頃、最初に驚いたのはお弁当にカップラーメンを渡す母親を見た時です。
「はい、これ今日のお弁当。」
「やったー味噌ラーメンだ!」
息子さんは味噌ラーメンであることにとても喜んでいました。……いや、重要なのはそこじゃないんですよ。お弁当にカップラーメンですよ?
初めてその光景を目の当たりにしたとき、私はとても信じられなかったのを覚えています。
と言うのも私はどの家庭もお弁当はお母さんの手作りが当たり前だと思っていました。なのでお母さんがお弁当にカップラーメンを渡すなんて、と私はしばらく驚きを隠せくせませんでした。
しかし、あれからいろんな家族を転々としていると、他にも同じような家族が沢山いました。
中には弁当を自分で買っていいよと言ってお金を渡すお母さんがいたり、お弁当はいらないよと弁当を持たずに家を出る家庭もあったり。
そして思いました。
お母さんが弁当を作ってくれることは当たり前では無いのだと。
〇
家出をしてから数ヶ月。
私はいつも果てしない後悔と迷いを抱きながら今日も家出を続けています。
家出をして、托卵の家族と生活を共にして、私は様々なことに気付かされました。
そして思います。
私の家族だけが本当に中が悪かったのか、と。
こうしていろんな家族を見続けて私は気づきました。私以外の家族も、同じように問題を抱えながら暮らしている。
自分の家族だけ仲が悪かったわけではないのではないか、私は最近そう思うようになりました。
……まあ、そんなこと今の私には関係ないですよね。
私は今後どんなことに気付かされようと、変わらず家出を続けていきます。いつまでもこの帽子と共に、托卵の家族を転々としながらどこまでも。
だから私は知りません。
この先どんなことに気付かされようと、私の知ったこっちゃありません。
【あとがき】
本編のランキングが68位に到達!日頃の感謝も込めて、今回のSSはちょっといつもと違う記念的な内容となっています。他人の家族と一緒に過ごして、ククースが様々なことに気づいていく。これこそが托卵の旅々の本質であり、これからのククースのことを示唆しています。
托卵の旅々はこれからも続いていきます。
果たしてククースの旅路の果てには、一体何が待ち受けているでしょうか?
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