第10話「家出少年ツバサ」

「ククースお姉ちゃん!」


私はまた嫌な人と再会しました。

彼の名前はツバサ。1度私の家出について来ようとした、家出がしたい少年です。


彼の家出の理由は馬鹿らしく、この前はお母さんの手伝いをしたくないからだとかほざいていました。全く、そんな理由で家出なんてしてほしくないものです。


「さっさと帰ってください。」


「ひどーい。なんでそんな事言うの!」


「どうせ今回の家出も下らない動機なのでしょう?」


「下らないって…そんなわけないじゃん!今回は僕もいつも以上に怒ってるんだから!」


「ほう、じゃあ言ってみてください。」


所詮彼は小さな子供。私の家出の理由と比べたら、彼の動機なんてちっぽけなものに違いありません。


私はあまり期待せず、彼の言い分に耳を傾けました。まあ、もしかすると今回の彼の動機は私が思っているよりも複雑なのかも……


「お母さんはね、僕の大切なカードを捨てたんだよ!」


「……。」


やっぱり。


ちょっとでも期待した私が馬鹿でした。


「コラーーー!!ツバサ!!」


そして流れるように彼のお母さんが私たちの元へ現れました。


こうやって彼が馬鹿げた動機を話して、私が呆れて、そしてお母さんが現れる。いつものパターンです。そして、


「ヤダヤダ!!帰りたくないぃぃい!」


「何言ってるの!!早く帰る!!」


「……はぁ。」


お母さんに強引に連れて帰られていくツバサさん。こうして彼の家出はいつも強制終了させられるのです。


全く、本当にみっともないですねぇ彼は。

お母さんも気苦労が耐えないでしょう。彼がいち早く家出をしなくなる事を祈るばかりです。


私は耳を引っ張られながら連れていかれる彼を見送っていました。


「うわーんお母さんのばかぁぁあ!!僕のカードを返せぇぇぇえ!」


「アンタそんなことで家出したの!?…はぁ、悪かったわよ。帰りに新しいカードを買ってあげるから」


「マジ!?やったーーー!!」


彼は急に元気になってお母さんと手を繋ぎながら去っていきました。


はぁ……。つくづく彼には呆れました。あんなしょうもない理由で家出をしようと思って、あんな単純な理由で機嫌を直してしまうのですから。



でも彼は幸せですね。

あんなしょうもない理由で家出をしようと思えるのですから。


まあ、私の知ったこっちゃありませんけど。





【あとがき】

10話ということで、せっかくなら本編に登場するキャラクターを出そうと思い、今回の話を書きました。ククースと同じように家出をしたいと思っているツバサ。彼は意外と重要なキャラで今後もちょくちょく登場する予定となっています。

気になる方は是非本編も読んでみてね☆

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