第9話「もう子供には戻れない」

「俺がもし、ひとりでブランコに乗ってたらククースは引くだろう?」


「ええ、まあ。少し驚きますね。」


「もし俺が滑り台で滑ってたら、ククースは笑うだろう?」


「ええ、まあ少し面白いなとは思いますね。」


「……そういうことなんだよ。大人になるってことはな」


 公園のベンチで座り、子供の遊ぶ様子を眺めながら、今回の托卵の家族のお父さんはしんみりとした表情で語りました。


「子供の頃は楽しかったな。父さんに色んな所に連れてってもらって、いっぱい遊んで……。まだやりたいこともいっぱいあったけど、気付いた時にはもう大人になってた。大人になったら子供の頃のように遊ぶことも出来ない。大人になるのは本当に寂しいことだな。」


「……はあ。」


 確かに大人になるのは寂しいですね。


 こうして公園で小さい子が遊んでるのを見ると、私はもう彼らみたいに遊べないことを思い知らされます。小さい子と同じように遊ぶには、少し大きくなりすぎてしまいました。


 しかし大きくなることは抗うことができません。


「もう子供には戻れないんだよな。」


 お父さんは寂しそうにいいました。


 しかし大人になることが悪いことばかりとは思いません。大人にならないと出来ないことだっていくらでもあります。


 私は言いました。


「でも、お父さんとして子供と一緒に遊んであげるのは、大人になって父親にならないと出来ませんよね?」


 子供と同じ目線になれば、少しは子供の頃に戻った気分になれるのではないか、と。

 しかし、お父さんは言いました。


「……疲れるから嫌だね。それに子供の考えることはよく分からん。」


「……。」


 色んな意味でもう子供には戻れないんですね。





【あとがき】

公園で昼ごはんを食べながらふと思ったことをお話にしました。たまにケイドロやジャングルジムで遊びたくなりますが、大きくなるとそれも難しいですね。

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