第8話「芳香剤」
私がいつものように托卵の帽子を被って家の扉を開けると、変な香りが私の鼻をくすぐりました。
臭い匂いと甘い匂いと、その他様々な匂いが混じりあったとてつもない異臭です。私は鼻をつまみました。長い間嗅いでいると頭が痛くなりそうです。
私は下駄箱の上に大量に並べられた様々な種類の芳香剤の存在に気づきます。なるほど、大量の匂いの正体はこれですか。
「ちょっと母さん!」
リビングの方から声が聞こえてきました。
私は靴を脱いでリビングへと向かいます。リビングでは高校生ぐらいの太った男の子とお母さんが何かを言い合っていました。彼の片手には芳香剤が握られています。
「勝手に置くなって言ったろ?」
「え?だって臭いもん。」
「臭いって……だからってこんな匂いのキツイ芳香剤置くなよな。」
「えー。だって臭いんだもん。」
臭い臭いと何度も言われ、高校生さんは悲しそうな顔をしていました。
「おいモニナ、いい加減芳香剤減らせよ。臭くて仕方がない」
今度はリビングにお父さんが芳香剤を片手に入ってきました。
「え?だって臭いもん。」
「臭いって……お前、少しは男の身にもなってくれよ。臭いのは仕方ないことだろ」
「だったら私のことも考えてよね。臭いからこうして芳香剤置いてるわけだし……」
「「臭いって言うな。」」
私は彼らの言い争いを遠目から見ていました。
……なんと言うか、男の人って大変ですね。まあ私の知ったこっちゃありませんけど。
【あとがき】
男性なら分かると思いますが、何度も臭い臭いと言われると普通に傷つきますよね。臭いはどうすることも出来ないのに。自分の母親に消臭剤を部屋に置かれた時は嫌な気分になりました。
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