第6話「お土産」
夜の都会を1人歩く私。ネオンライトが街を彩り、街の至る所でまるでドラマのワンシーンのようなやりとりが繰り広げられています。
居酒屋の前で肩を組みながらよっぱらっている人がいたり、腕を組みながら歩く男女がいたり、その様子は十人十色。
私は少しワクワクしながらそんな彼らの姿を眺めていました。
「ういー」
そんな私の隣ではお酒に溺れ、酔っ払っているサラリーマンがいました。
彼は今回の托卵の家族のお父さん。私は帰りが遅い彼のことを迎えに行き、そして今に至ります。
酒臭い彼から少し距離を置いて、私は黙々と歩いていました。
「うおー、そうだー。ククース、ちょっと寄り道してくぞー」
サラリーマンさんは脇道に逸れ、とある店へと入っていきました。私はため息をついて彼の背中を見送ります。
はあ。こんな酔っぱらいの男性が夫だなんて、今回の托卵の家族のお母さんはさぞ大変でしょうね。私が知っているドラマのイメージだと、こういうタイプの男性は大抵奥さんを大事にしません。
きっと彼も帰ったら奥さんに迷惑をかけるタイプの父親なのでしょうね。私は少し奥さんのことを不憫に思っていました。
「お待たせー」
しばらくすると、サラリーマンさんは店から出てきました。
〇
家に帰ると、奥さんが玄関で待ち構えていました。
「遅かったわね。」
「ういー帰ったぞー」
「こんなに酔っ払って、一体どれだけ飲んできたの?」
……ほらやっぱり。
こういうタイプの夫は、奥さんの言うことを増やすんですよ。
「ごめんごめん。はい、コレ。」
「何?」
私がやれやれと思っていると、サラリーマンさんは小さな小包を取り出して奥さんに手渡しました。
「お土産。」
「まあ、これ私がずっと欲しかったネクレッスじゃない!覚えててくれたの?」
酔いつぶれてドアによかりながら、サラリーマンさんはこくこくと頷きました。奥さんは顔を赤らめ、サラリーマンさんのことを見つめます。
「……ありがと。ユーくん。」
「……。」サラリーマンさんは寝ていました。
私はどうやら誤解していたみたいです。
彼は決して奥さんを大切にしない人ではありませんでした。むしろ奥さんのことをしっかり考えている、とても優しい夫です。私はとんでもない誤解をしてしまっていたようですね。
まあ、私の知ったこっちゃありませんけど。
【あとがき】
ちょっといい話風のお話ですね。
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