第4話「タバコ」
私が玄関の扉をくぐると、中から不快なタバコの香りが鼻につきました。
私はこの匂いが大嫌いです。私は鼻を摘み、匂いを嗅がないようにしました。しかし今度は口呼吸で悪い空気が直に私の肺に入っていくのを感じます。
不快ですね。一体誰がタバコを吸っているのでしょう?
「おお、おかえり。」
私が険しい顔をしていると、家の奥から全ての元凶が顔を出しました。彼は白衣を着て、口からは白い煙が漏れ出していました。
おそらく彼は今回の托卵の家族のお兄さんです。そして彼こそがタバコを吸っている張本人です。お医者さんみたいな格好をしてるのに、やってることが全く健康的じゃありません。
「臭いです。タバコを吸うなら外で吸ってください。」
「え?いいじゃん別に。それにタバコを吸うと気持ちが落ち着くんだよね~」
ダメですねこりゃ。彼は完全にタバコ依存症です。
「ちょっと!なにタバコ吸ってるのよ!」
私が彼のことを睨みつけていると、部屋の奥から彼のお母さんらしき人物がやって来ました。
良かったです。流石にお母さんから注意されたら、彼もタバコを吸うのをやめることでしょう。
「えー良いじゃん。」
「良くないわよ。それにアンタが私にタバコを吸うのを辞めろって言ったのに、それは違うでしょ!」
「へ?」おっと?何やら様子がおかしいですね。
「私はアンタに健康に悪いからって注意されて、渋々タバコを辞めたのよ?なのになんでそのアンタがタバコを吸ってるのよ。話が違うじゃない!」
「あれ?俺そんな事言ったっけ?」
「言ったわよ。」
「あーごめんごめん。確かに言った気がするわ。でも今はタバコが健康に悪いだなんて関係ない。だってタバコはこんなにも美味しいんだからな。」
彼はタバコを一本取り出し、お母さんに渡しました。
「アンタもおとなになったのね。」
「ああ。健康がどうとか関係ない。自分が吸いたいって欲に忠実にならないとな。」
今度は二人で揃ってタバコを吸い始めました。
私は倍になったタバコの香りに耐えかねて、踵を返し家を出ました。
◯
確かにタバコは健康に悪いです。
しかし健康に悪いからと言って、自分が吸いたいと思っているから自己責任で吸うっていう彼の言い分は理解できないことはありません。
しかしタバコは本人より、周りの人に大きな害があるということを忘れては困ります。タバコは主流煙より副流煙の方が体に悪いのです。
自分がよくても周りの人がよくないと思っていることにはしっかり目を向けてほしいですね。彼らが社会から白い目で見られ、対人関係にまで害を及ぼすようにならないことを願います。
まあ私の知ったこっちゃありませんが。
【あとがき】
友人から聞いた家族エピソードが面白かったのでSSにしました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます