第3話 鑑定ちゃんと隠蔽ちゃんはあざと可愛い

「やほ!貫通兄ちゃん久しぶりに見たけど元気ないねー?」

「ご無沙汰なの〜!」


 決めポーズのままそんなことを言う二人。

 元気なほうが姉の鑑定ちゃんで、少しおっとりしている方が妹の隠蔽ちゃん。


 二人とも序盤の必須スキルとして人気が高く、常にセットでマスターに呼ばれることが多い。

 そのため、街で彼女達の姿を見るのは久しぶりだった。


「忙しそうなのに二人はいつも元気だな」

「でっしょ? なぜなら帰ってきた時はいつもパパの作ったパンを食べてるからなのだ!」

「そ、そうだよ〜。パパの作るパンを食べるとポカポカするの〜」

「あーたしかにお前らのとこのパン美味いもんな。うちの母さんもよく買ってくるし」

「でも、好きなことしてる時が1番元気ー!」

「何食べても同じなの〜」

「台無しだよ」


 そう言われて「えへへ〜」と笑う双子の姿に癒された絶対貫通は、ポケットから財布を出して中身を確認すると二人に声をかけた。


「よし、今日はお前らの所でパン買っていくか」

「兄ちゃんカッコイー!」

「でも彼女いないの〜」

「やかましいわ」

「可哀想だけど鑑定ちゃんは歳上は無理だからごめんなさい」

「い、隠蔽ちゃんは好きな人いるからごめんなさいなの」

「なんで俺がフラれたことになってんの」


 幼女の吐く毒は、フラれたばかりの絶対貫通の心によく効いた。


「まぁいいや。ほら行くぞ。店に案内してくれ」

「貫通兄ちゃん、道もわからなくなったの?」

「頭のお医者さん呼ぶ〜?」

「よし、お前らの母さんに二人が隠れて菓子パン盗み食いしてたの報告しに行くか」


 からかうのを辞めない二人に絶対貫通がそう言うと、二人の態度は豹変した。


 鑑定ちゃんは上目遣いで絶対貫通を見つめ、隠蔽ちゃんは絶対貫通の手を掴むと、手のひらを指で優しくなぞってくる。


「お兄ちゃん……好き」

「隠蔽ちゃんね? お兄ちゃんと手……繋ぎたいの」

「どこで覚えてくんだよそんなこと……」

「「この前のマスター!!」」

「マジかぁ……」


 元気よく返ってきた答えに二人の将来が心配になった絶対貫通は、小さくため息を吐いた。




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