第2話 カウンターという男
「お、お前それ、どういう意味で言ってるのかわかってるのか?」
アディの爆弾発言に多少狼狽えつつも真意を聞く絶対貫通。
周囲にいる者達もその答えに興味津々だった。
「うん! だって私達を使うといつも決着がつかないからってみんな解除して戦うでしょ? それにどっちが本当に絶対なのか終わらない議論したりするでしょ? でもでも! かんちゃんならきっといつかは私の防御を貫けると思うもん!」
「あぁそういう意味ね……」
「ん? 他に意味あるの?」
「いや無い。全然無いし、あるわけない」
そう言って目を逸らした。
「お前、大変だな」
「うっせ」
「何の話だい? それに、こんなに集まってなにかあったのかな?」
同情するような威圧の言葉に素っ気なく返事を返した時、そこに新しい声が入ってきた。
その声の主はこの街でもっとも人気のある男。
その名も……
「カウンター……」
パリィが好きだと言った男の名前を、パリィにフラれた絶対貫通が呟く。
カウンターはその声に反応したかのように顔をパァっと輝かせると、ニコニコとしながら絶対貫通の前に足を進めた。
「やぁ! 絶対貫通じゃないか。最近呼ばれてないみたいだけど元気かい?」
「お前は忙しそうだな」
「あはは! ついさっき帰ってきたばかりさ。なんでも、敵の攻撃をかわして僕を決めるのがカッコイイらしくてね。自由に選べるスキルセレクトの時も、スキルガチャでも僕がピックアップされてるやつを選ぶマスターばかりで困るよホント」
「はいはいソーデスカ」
「でもおかしいと思うんだ。僕よりも君の方が強いのに。君もそう思うだろう?」
「…………」
「例え僕を発動しても必ず倒せるわけじゃないし、逆にピンチになることもある。うーん、不思議だ」
「俺は付与効果だからな。そんなもんだろ」
「でも当たれば凄いじゃないか! 当たれば!」
「ぐっ……」
悪意のない無自覚な言葉のカウンターが決まる。
言われた本人からしたら嫌味にしか聞こえない言葉も、カウンター的には本心からの言葉。
そういう男だということを絶対貫通は知っているため、何を言われても適当に頷き、さっさとその場から去ることにした。
「悪いカウンター。俺ちょっと用事あるから行くわ」
「そうかい? じゃあまた今度。スキルセレクトに選ばれなかったら、次のスキルガチャの日に会おう」
「おう」
「あ、待ってかんちゃん」
その場から立ち去ろうとする絶対貫通を追うように、アディもついて行こうとしたが、それはカウンターに止められてしまう。
「なんだ。アディもいたのかい。ところでこの前のこと、考えてくれたかな?」
「え、あの……いえ、まだ……」
「そっかぁ。まぁ時間がかかるのはしょうがない。君の人生を決めることだからね。でも僕は本気だよ?」
「でも……その……」
「ほら、行くぞ。お前もお前の母さんから買い物頼まれてるだろうが」
「え? ……あ、うん! そうだった。うん、頼まれてるだった!」
「つーわけで悪いなカウンター。こいつは連れてくわ」
「おっとそれはそれは。引き止めてすまないね。さて……おっとそこにいるのは威圧に麻痺針、毒息もいるじゃないか。今からご飯でもどうだい? 奢るよ?」
カウンターのそんな声を聞きながら、絶対貫通とアディの二人はその場から離れた。
あの場から離れ、人通りの少なくなった商店街を、二人は少し距離をあけてはいるけども並びながら歩いていた。
「かんちゃんありがと」
「なにが?」
「さっきのこと」
「別に大したことじゃない」
「うん……」
「かんちゃんって呼ぶなって言っただろ」
「ごめんね、かんちゃん」
「ったく……」
「…………」
「…………」
やがて会話もなくなり、沈黙が続くとアディが足を止めた。それに合わせて絶対貫通もその場に止まる。
「じゃあ私行くね。そろそろご飯の準備手伝わないと」
「ん」
「またね」
「あ……」
「ん? どうしたの?」
アディが首を傾げて聞いてくる。絶対貫通は、引き止めるつもりじゃなかったのについ声が出てしまったことに焦りながら頭を搔くと、思い切ってさっきからずっと気になっていたことを口に出した。
「いや、そのあれだ。さっきカウンターが言ってたこの前のことってなんだ?」
「…………ごめんねかんちゃん。それは言えないの。ごめんなさい」
「そ、そうか……」
昔からなんでも言ってくれていたアディのその返答に少し動揺した絶対貫通はそれ以上何も言えなくなってしまっていた。
「私、帰るね」
「ん」
立ち去るアディにそれだけ言って後ろ姿を見送り、何となく目的もなく歩き出す絶対貫通。
なんか妙にモヤモヤしながら歩いていると、突然目の前に二つの影が飛び出してきた。
「とうっ! 鑑定ちゃん参上!」
「い、隠蔽ちゃんさんじょ〜!」
「「二人合わせて……不可欠スキルシスターズ!!」」
今にも背後で爆発でも起きそうなポーズを取る二人の少女。
この二人はここ、スキルの街で唯一のパン屋の双子の姉妹である。
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