第二十七話: 附言は混沌の檄
【
世界を覆いつくさんばかりだった
しかし、ただ一つだけ、直前まで存在しなかったものがそこにはあった。
祭り会場の小舞台と手前の広い領主卓、その中間、仰ぎ見るほどの高さに浮かぶもの。
姿形は
白く半透明な、襟元から足の先までの長さがあるポンチョに似た外衣をまとっている。
中は全裸かと思えたが、隙間無く肌に密着し、金属的な光沢を放つ黄銅色のボディスーツか。
模様や
『天使?』
「宇宙人?」
僕の貧相な感性では、そういったコメントしか出てこない……が。
「……星の神」
「神殿の絵で――」
「なんと、星神の降臨とは……」
そこかしこより漏れる村人たちの呟きが次第にざわめきへと変わっていく。
「あなた……」と、すかさず母トゥーニヤがマティオロ氏に耳打ちすれば。
「ハッ! ひ、控えろ! 神の御前だ! ……司祭殿、いいか?」
「ええ、お任せあれ、ベオ・エルキル」
我に返ったマティオロ氏は、周りのざわめきを抑えると一歩引いてアドニス司祭へ後を託す。
『むむ、大丈夫なのか? モンスターとかじゃないのだろうか?』
――ザザザァッ!
つい
上位者の前ではお行儀よくするという
おっとと、とりあえず空気を読んで皆に
アドニス司祭を先頭に身を低くして
「子らよ……いまだ天への
星神?は言葉を発した。少年か、少女か、意外にも幼さを残す高音ながら美しい声だ、
「大儀なり。
――どよっ。
困惑、歓喜、畏怖……並み居る聴衆が様々な感情から身を震わせ、どよめきを起こしかけるも、振り返ったアドニス司祭が視線と手振りを送れば、徐々に
そうした光景を気に留めた風もなく、星神は言葉を続ける。
「これよりは
――あー、あー、てすてす……聞こえてます? もしもーし!
「ぶっ!?」
『おい?』
――なんちゃって! ぷぷっ、録音中に返事あるわけないよね。それじゃ本番。えふん、けふん。
星神が宣言した直後、虚空より流れ始めるは、場にそぐわないにもほどがある女性の声だ。
――そっち、どのくらい時間経ってるんだろ。調べんの面倒だからあんまり経ってないっていう
『……なぁ、この声……この口調……覚えがあるぞ』
――お二人とも、まだ赤ちゃんかな? 元気でやってます? ふふふん、裕福なお
相変わらずの要領を得ない話だ……が、なんとか集中しなければ。
これは僕以外に理解できないであろう
戸惑っている周囲のことも、今は意識から追い出しておく。
――でもでも! きっと一緒に生きたいだろうなって気持ちをお察しして、ちゃーんと出逢える運命にしといたので、そこは安心ですよ。ほら、よく言う、腐れ縁? じゃなくて、
『頭がクラクラしてきた。誰か、要点をまとめてくれないだろうか』
――さっきも言いましたけど……って、そちらにとってはさっきじゃないかも? ま、いーや。ともかく、言った通り、こっちからはこれ以上できること何もありませんので、最後にしっかり大事なこと伝えられてよかったー。それじゃ、第二の人生、頑張ってくださいねー、
「……以上である。
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