第二十五話: 荷羽車に揺られて細道
狩猟
――チュンチュン! チュンチュン!
前世地球であれば誰もが巨大スズメと評するであろう見た目ながら走鳥類の特徴を備える下級魔獣モントリーが二羽立てで
大きな
「ほーら! 行ったよ! いいかい! 決して羽車には近付けんじゃないよっ!」
「はい!」
「くっそ! そっち行くなっての!」
「マジすばしっこすぎなんですけど!」
「返事っ!!」
「「へい!」」
いずれも
――キュキュッキュイ!
その周囲をぴょんぴょんと跳ね回り、からかうかのような
体長三十センチほど小さなサル――ガラゴによく似た二匹の生き物である。
奴らの名は
両拳に装備した果実の殻はさながらボクシングのグローブだが、意外な威力を見せるパンチを何発食らおうとそうそう
『苦戦しているようだな。まぁ、僕らが心配する必要はないさ。ジェルザに任せておけばいい』
「うん、ノブさん……おっと、ノブロゴ。あとどれくらいかな?」
周りを意識から追い出し、隣で御者を務める我が領の従士長ノブロゴ爺さんに声を掛けてみる。
「残り半分ってとこじゃねえか。ほぼ予定してた通りに進んでんだろ……おっと、進んでますね、
「あはは、他領に行くのは、ここに移住してきたとき以来だし、ちょっと緊張するよ」
「
そのノブロゴ翁の言葉が聞こえたか、後ろの荷台より新たな声が会話に加わってくる。
「フッ、
「それは分かってるんですけど、何があるか分からないじゃないですか」
「あっとこの家も……まっ、うちの大将ほどじゃねえにしても大概ゆるい貴族ですがね」
我がエルキル領のお隣さんに当たるオギャリイ家は、父マティオロが持つ
ああ、
前世ヨーロッパに
あまり
「これだけの
「ファルは! ファルはね。靴が欲しい」
「ちびっこ、
「ねっ、ねっ、ミャアマは何買う?」
「人の言葉が通じないんですか。いいから座んなさい。何度も言わせないでくれませんかね」
見ての通り、御者台にいる従士長ノブロゴと僕の他、この羽車には数人が同乗している。
後方の荷台に乗っているのは、アドニス司祭と
交易品――うちの産物を納めたいくつもの木箱に埋もれるような状態で
振り返って荷台の更に後ろを眺めれば、別のモントリーたちが
――ピュイ! キュッキュキューッ!
「はぁはぁ……やっと追い払えたかぁ」
「あンのサルどもっ! な、なめやがって~」
「もー、最後まで遊ばれてたじゃない」
「ほら! 終わったらさっさと持ち場に戻んな! だらだらしてたら草むらン中に叩っ込むよ!」
「「「へーい」」」
護衛の冒険者たちに囲まれた三台の
草原の中、荒れた細い道をガタゴトと……。
目的の町までは、まだしばらく掛かりそうだ。
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