第十七話: 狩猟納めと夜の宴
昼から夕に掛けての【海ノ刻】が過ぎゆく十八時頃、夜の【森ノ刻】へ向かう
すっかり過ごしやすくなった屋外、僕らを含む狩猟大会に参加した三パーティー総勢十五名の子どもたちが大きなテーブルを囲み、未だ興奮冷めやらぬといった雰囲気で盛り上がっていた。
「――そこで
「「「すっげえ!」」」
「ふふーんですわ! まっ、眠らせるのは失敗したんですけど」
「ねー、ねー、ハチミツは? このハチミツはどうやって
「あ、それ聞いちゃう? 凶暴なラーテルに立ち向かった僕たちの勇姿――」
「ラーテルはおとなでも手をやくって
狩猟大会で栄冠を手にした僕らの
調子付いたカザルプ少年の語り口が冴え渡る。
そもそもの話、他の参加者たちはモンスターと戦うほどの気概や戦闘力を持ち合わせておらず、休眠中の大ネズミや草の実などを取ってきたくらいのもの、
狩猟に参加しなかった子や幼児とも一緒になって
開拓村の中央広場、ど真ん中に設置されたその大テーブルの周囲には、数合わせや引率として付いてきていた大人たちを始め、多くの者が集まり、微笑ましそうな顔で子どもたちの武勇伝に耳を傾けている。
「フッ、なんとも牧歌的な光景です。そうは思いませんか、
その中の一人であるアドニス司祭が、美男子然とした
前世の記憶にある英国風メイドを思わせる衣装に身を包んだ小柄な少女である。
「話を
「やれやれ、まるで私の
「は? 冗談でもよしてください、そういうの」
毛虫でも見るかのような目つきだった。
可愛らしい衣装にそぐわぬ無表情の中、目だけがあからさまな嫌悪の情を浮かべていた。
「フ……ともあれ、そういうことなら急ぎ戻るとしましょうか。参りますよ、巫女ミャアマ」
「どういうことでも呼ばれる前に自分で戻ってきてくれませんかね」
「親愛なる君を困らせぬよう、せいぜい善処するとしましょう」
少女に背を押されるかのように神殿の門を潜りゆくアドニス司祭を思わず見送ってしまった。
……っと、広場の外縁へ目を向ければ、そこかしこに数多くの小テーブルが
料理を出し、空いた食器を下げ……と、各テーブルを
仕事終わりのくたびれた様子で続々と列を成して広場へ入ってくる労働者たち。
中でも
異国情緒を
実は、昼から行われていた子どもたちの狩猟大会は、この夜祭りの余興に過ぎない。
夜の
辺境の小さな開拓村では、日々の生活は苦しく、過酷な自然環境に耐え続けるのが常である。
そんな中、余裕がある節目の時期に催されるいくつかの年中行事は、皆の重要な息抜きとなる。
神殿の暦に従った一般的な宗教行事も少なくないが、出身地を
迫り来る乾季の盛りに備え、腹一杯になるまでご馳走を食べ、雲一つ無く広がる夜空へ感謝と祈り、そして
「昼下がりの狩猟大会と同日開催だから、うちでは大人から子どもまで楽しめるイベントだよ」
余談になるが、その狩猟大会は、獲物が激減する乾期の狩猟
枯れ野に居座って気性が荒くなる【
こちらは特に由来となった伝統的行事があるわけではなく、自然発生的に定着した。
『ちょうど組み合わせの相性がいいんだよな。元はと言えば、足の早い保存食や酒類がそろそろ賞味期限切れになる時期だから、盛大に喰い尽くしてやろうっていう――』
「いや、そんな
『そうか? 伝統行事の成り立ちなんて興味が湧くものじゃないか』
……まぁ、いい。しかし、これだけは言っておかなければ。
この世界に存在しないであろう【サン=テグジュペリ】という言葉に深い意味はない。
例によって、僕の何げない呟きを拾われ、何故か正式採用されてしまっただけのことである。
まったく、我ながら意味不明な連想をしたものだ。
************************************************
もしも星祭りをしたくなってしまった方は、どうぞ以下のリンクから★★★を。
https://kakuyomu.jp/works/16817330663201292736/reviews
ささ、お気軽に是非。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます