第十六話: 狩猟大会、ラストアタック
浅く流れる小川の
「もらったぞ! アアアッララァイ!」
その場へ一足早く駆け込んできたのはイヌオ――赤毛の少年ハイナルカだった。
片手で持つには大きめの
辺り一帯、
ところどころ、まるで底なし沼の如く泥が
体重二トンに迫るのではないかというサバナ牛にとって、体勢を立て直すことは容易でない。
その首元深くへ、ドガッ!と轟く打撃音と共に鉞の刃が叩き込まれた。
再度、大きく振りかぶって二撃目! 更に三撃目! 繰り返し大斧は振るわれていく……が。
「あぶない!」
「下がって! イヌオ!」
「ぶぅもおおおおおおおっっっ!!」
まだそれほどの力が残されていたのか、サバナ牛は血塗れの首をよじり、巨大な角を振り回す。
しかし、追いついてきたカザルプとコシャルの投石が命中し、
ただし、
「うわっ、まだ立ち上がるんだ。あれだけ攻撃を当ててるのに……」
「大丈夫だ! 足場の悪いここなら自由に暴れられっこねえ。ダメージも入ってる。やるぞ!」
「「おおう!」」
『いや、残念ながら、ここで時間切れらしい』
「あ、ほんとだ。これは決まるね」
――ひょぅ……っ、ドスッ!
どこからともなく飛来した一本の矢が、まるで吸い込まれるかの如く、サバナ
根元まで深々と刺さった矢はどう見ても致命傷――トドメの一撃である。
今の今まで吠え猛っていた暴れ牛が、一声も発することなく、ゆっくり地に伏せてゆく。
「ぎにゃーっ! 私の獲物があ! 誰? 今、撃ったのは誰ですの? 出てきなさい!」
川岸より姉クリスタの声が響き、皆が周りを見渡せば、対岸の遙か下流の方角に人影が一つ。
サバナ
「あいつだ!」
「あいつかぁ……」
「もー! もー! あとちょっとだったのに!」
軽やかな身のこなしで対岸の
頭に巻き付けた
「ほほう、相変わらず見事な弓ですね。ユゼクは」
「ふふん、
年の頃、
ちなみに、しれっと僕らの近くにいるアドニス司祭にも参加資格はない、言うまでもなく。
「……ったく、こんな大物を狙うかよ。逃げろよ。他の奴らが真似したらあぶねえだろうが」
「けどよう、ユゼク。もう少しで仕留められそうだったんだぜ?」
「そうだ、そうだ、ジックの矢がなくったって」
「バーカ。
近付いてきたユゼクは挨拶も抜きに、まず少年たちの蛮勇を
開拓最初期よりの移住組である僕らは全員が
「ちょっと、ジック……じゃなくてユゼク!」
「……ちっ」
「よくも私の獲物を横から
肩を
最後まで、僕とは目を合わせようともせず。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
水ダルマに捕らえておいたラーテルを仕留め、集まってきた大人たちにも協力してもらいつつサバナ
狩猟大会の閉幕を告げる合図である。
残念ながら、サバナ
しかし、替わりにと言うべきか、最後の最後、大会終了直前に別の獲物を得ることはできた。
それをもたらしたのは、あのラーテルが追いかけていた一羽の小鳥だ。
ファルーラの指摘により見付けた小鳥を
「あった! すごく大きそうなの」
「まだ群れも冬眠してないか。こいつは期待できるぞ」
「ハチミツ!」
そう、その根元に
ここまで僕たちを案内してきた一見変わったところのない小鳥はミツオシエと呼ばれている。
実は、自分では
ハチミツはラーテルの大好物なのだと言う。
『こんな
「有り難い鳥だよ。こいつに教えてもらわないと、ハチの巣なんてまず見つからないからね」
クリスタの魔法術【
結局、大して戦力にはなれなかった僕だが、その喜びは皆と分かち合うことができたのだった。
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※ラーテルとミツオシエは実在の生き物です。面白い関係の奴らですよね。
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