第十四話: 希う幼女、野生の対決
襲来した巨獣型モンスター・サバナ
雨季の
仲間たちがサバナ牛と
精霊術【
そして、川岸の方から
「ファル、いいかい? ちょっとだけ時間を稼いでほしいんだけど」
「あの子と遊んでればいいの?」
「うん、話が早いね。だけど十分に気を付けるんだよ」
さしあたって、早めに対処しなければならないのは、こちらへ駆けてくる一匹のラーテルだ。
前世地球にも棲息していたはずの動物だが、これが意外と侮れない危険生物なのである。
見た目は体長一メートル前後の細長いクマといった風で、強力な爪と牙を武器としている。
しかし、何よりも恐るべきは、動く物に見境なく襲い掛かるほどの凶暴極まる攻撃性だろう。
『目を付けた相手に対して延々と攻撃し続けるしつこさだ。サバナ牛と戦っている皆の後ろまで、間違ってもこんな奴を行かせるわけにはいかないな』
とは言え、こいつは僕にとって
空中に浮かんだまま精霊術で一方的に攻撃してやれば、何ら危険を
そこで今回はファルーラにも協力してもらうことにした。
「来たぁ! はやい!」
元より、大して距離が離れていたわけではない。
僕らの存在に気付いたラーテルはすぐにファルーラがいる坂の下へと迫ってくる。
その速さに驚きを見せたファルーラだが、取り乱すことなく段丘状になった大岩の上に立ち、自分の足をひと口で食いちぎれそうな体長一メートル超のラーテルを見下ろす。
ごおっふ!と
「ラーテル、カワイイね。それなら……デザイア!」
大岩を舞台に見立てたか、くるりと片足を軸に右回転、ポーズを決めて発するは
続けて
「あそぼ! イヌマン!」
直後、ファルーラが立つ大岩の付け根辺りにボコっと盛り土が出現し、モグラの
これに進路を
いや、テリア犬そっくりの頭を持ち、短い尻尾も生えたソレは明らかに人間ではない。
衣服は身に着けておらず、全身は撫でつけた長い毛にも見える柔らかそうな鱗で覆われている。
にも
僕とはまったく異なるファルーラの精霊術――紛らわしいので【精霊召喚術】と呼ぼうか――によって現れ、使役することができる数種類のモンスターのうちの一体が、この怪人イヌマンだ。
「イヌマン、かばでぃー!」
「キャンキャン! キャンキャン! キャンキャン!」
ファルーラの指示に従い、イヌマンがスコップを振り回しながら前後左右小刻みに跳ね回る。
動く物に対して激しく攻撃する習性を持つラーテルは、それに一瞬で釘付けとされてしまう。
ぴょんぴょん同じようにステップを踏みつつ、二匹がそれぞれの武器で攻撃を繰り返す。
ととととっ! ラーテルが素早く駆け、すれ違い様に低い位置から噛みつけば……。
イヌマンはアクロバティックなステップで回避しつつ逆にスコップを突き出していく。
どちらも有効打にはならないものの、目まぐるしく攻守が入れ替わる激しい接戦に見えた。
「ギャン!」
「ああっ、がんばれー」
『おおっと? それでも
しばらくすると、ラーテルの黒い
「キャンキャン、きゃん……くぅーん……」
「やぁ、まだ帰っちゃダメ! ステイ! イヌマン、ステイ!」
ガジガジと
必死に留めようとするファルーラの声も、もはや届かない様子だ……が。
「――あいつらにまとわりつけ【
ここまで時間はしっかり稼いでもらった。
水の操作を苦手とする僕であっても、小川の水から大きな水球を作るのに十分すぎる時間だ。
「キャ、キャンキャン?」
「ごぉっふ……がふ……かふ……」
逃げる間もなく粘液のムチに巻き取られた二匹の獣は、直径二メートルほどの
どれだけ激しく手足を掻こうと、もはや抜け出すこと
それは、まるで双頭の
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