第十三話: 角笛の音に勇む少年たち
――ぼわわわぁ~お!
遠くの方で大人たちが吹き鳴らす角笛の音だ。
この角笛、鳴らし方によって様々な合図ともされるが、基本的には単なる時報である。
「イヌオ! サルフ! キジィ!
ここまで、僕が仕留めたモンスターから得た魔石を除けば、まったくの
例年、収穫ゼロで終わる参加者も珍しくないイベントなので、特に恥じる必要はないにしても。
「あっは、まさかだよ!」
「今まで力を蓄えてたんだ!」
「ふん、俺が付いてて『何も見つからなかった』とは言わせられないな!」
姉クリスタの声に応え、三人の少年たちは揃って気炎を吐いた。
各自、腰に吊した水袋を手に取り、ごくごくっ!と水を
『運が
「ヤバイ! みんな、動くな!」
そのとき、川の
鋭い声に全員が動きを止める、と
数メートル下を流れる細い小川に沿って遠くから走ってくる生き物の姿が目に入った。
頭頂と背中は白っぽく、それ以外の腹や脚は黒、特徴的なツートンカラーの毛皮を持つ獣だ。
体高は
「
「うは、でっかい。
「あいつはスルーですわね」
ラーテルとは、アナグマやマングースなどに似た雑食性の
確か、地球のアフリカ辺りにも棲息していたはずなので、ご存じの方もいるかも知れない。
従士見習いとして戦闘訓練を受けているハイナルカと魔術師見習いであるクリスタがいれば、決して狩れない相手ではなく、肉は食用になるし、なかなか良い毛皮も取れる。
だが、ああ見えて気性が荒く、目に付くものは何でも襲う危険生物として恐れられているのだ。
いくらなんでも、子どもたちだけで無理に挑むほどの獲物ではないだろう。
――ぼぉーおっ! ぼぉーおっ! ぼぉーおっ!
折良く、要注意の生き物が出現したことを表す警戒の角笛が辺り一帯に響き渡った。
僕ら全員、じっと息を潜め、幅二十メートルほどの小さな谷底を行くラーテルを見守る。
「ハッ!? 待ちなさい! シェガロ様、急ぎ
「えっ? いや!
突如、何に思い当たったのか、今度はアドニス司祭が声を上げた。
すかさず周囲を見渡してみれば、遥か遠くで慌てふためく大人たちの姿と……。
「うわっ! みんな、急いで川上の方へ……って、間に合わない!?」
そこで、地上の少年少女も異変に気付く。
緩やかな丘の向こうより伝わってくる
徐々に……いや、瞬く間に高まる地響きを伴って猛烈な勢いで
グレイトホーンとも呼ばれるそのモンスター――サバナ
そして、谷底へと追い立てるかのように、ヴォオオオ!と凄まじい
『まずいな。ラーテルにも気付かれてしまった。前門の牛、後門のアナグマ、挟み撃ちだ』
「クリスタ姉さん! サバナ
「シェガロ! 姉に指図は無用ですわ! イヌオ、やれますわね?」
「ああ、問題ない。
「うきっ!
「けけっ! これは
どうやら、姉クリスタと仲間たちはすっかりサバナ牛とやる気のようだ。
僕の見立てによれば、彼らの手には少々余る強敵ではないかと思われるものの……。
いや、万が一があってもアドニス司祭が控えている。ひとまずは任せても大丈夫だろう。
「分かった……でも、
「フッ、シェガロ様。こちらのことは私が
「お願いします」と、アドニス司祭へ返し、僕はきょとんとしている残る一人に目を向けた。
「それじゃ、ファル、君にはラーテルの方を手伝ってもらおうかな」
「なになにー?」
それぞれやるべきことは決まった。
いよいよ戦いの
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