第九話: サウナ暮らしの兄姉たち
暑い。
とにかく暑い。
日中の気温が四十度を超すこの地の乾期も、慣れてしまえば意外と快適に過ごせなくもない。
ただし、それはあくまでも強い風が吹く屋外にいる場合に限られる。
大量に飛び交う
汗が肌の表面に浮かぶことなく汗腺から
と、思いつくと水差しを手に取り、すっかり目減りした
「「ショーゴー、あつーい! クーラーつけてー!」」
そんな過酷極まりない暑さを
「ラッカ、ルッカ。お兄ちゃん、今、お勉強中だから――」
「「はやくしてー」」
「……クーラーはまだ執務室で使ってるんだよ。パパとママの仕事が終わるまで待ってて」
「はあ? ショーゴつかえない」
「はぁ~、ショーゴきらーい」
「こら、簡単に人のことを嫌いとか言っちゃダメだよ」
「「つーん!」」
数え年で六つになった妹たちは、現在、反抗期の真っ最中である。
秋を新年とするこの国の数えで六歳ということは、前世の満年齢ならば四歳半くらいか。
幼児特有のイヤイヤ期など、
やたらと僕に絡んできて、何か言えばすぐ逃げ出してしまう、非常に扱いづらいお年頃なのだ。
「おーい! 走り回ってると熱中症になっちゃうから、屋上のテラスで大人しくしてなよーっ! ふぅ、まったく、二人ともちょっとわがままだから困っちゃうよね」
『んん? ちょっと? ……いやいや、お前、あの子たちから完全になめられてるぞ』
僕は、こう見えて子どもの扱いは割りと得意な方だ。
お忘れかも知れないが、前世では女子校教師、それ以前もお世話になっていた児童養護施設で年下の子たちの面倒を見ていたこともある歴戦の
『お前だって僕だろうに……どうも、子どもたちを甘やかしすぎに感じるな』
「そうかい? 叱るのは大人たちに任せておけば大丈夫でしょ」
『だから、僕らも大人だと言うのに』
ただでさえ女系家族のお坊ちゃんなのだから、妹たちにまで好き放題させていたら将来的にはいろいろと差し障りがあるのではなかろうか。言うまでもなく、あの子らの
お互いのため、もっと
そのまましばらく勉強を続けていると、また誰かが子ども部屋へ近付いてくる気配を感じた。
「シェガロ、いいかしら?」
声を掛けられ、部屋の入り口に目を向ければ、そこには長い銀色の髪を持つ少女の姿があった。
先ほどの妹双子と同じく僕の
「お父様とお母様が執務を終えるそうですわ。先に下で準備をしておいてちょうだい」
「うん、クリスタ姉さん。すぐやっておくよ」
「ふふっ、お願いしますね。私も、妹たちを連れて後から行きますわ」
サウナの如き
銀色の髪と白い肌、爽やかな色合いに染められた衣服、なんとも涼しげな
彼女に負けじと僕も暑さを
『ふぅ、ようやくこの暑さから解放されるのか。無理せず外にいれば良かったものを』
「いつも通り、冷房の効いたところでやろうと思って予定を組んじゃってたよ……ちぇ」
『仕方ないさ。一基しかない【送風】の魔道具が何の前触れもなく壊れてしまったのではなぁ。表に出せない領主の執務をしなければならないマティオロ氏に対して、この酷暑の中、大人数で執務室に
二階の子ども部屋を出た僕は、一人ぼやきながら階下へ向かう。
狭い廊下を通り抜けて階段を降りれば一階エントランスホールは目の前だ。
半年前に増築された我が
この二階吹き抜けのエントランスホールは玄関入ってすぐ、奥のリビングダイニングに面し、ゆったりとダンスくらいはできるほどの広さを持つ空間となっている。
いや、内装に関しては、とてもダンスを踊るのに
「それじゃあ、
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※姉妹についてお忘れでしたら以下のリンクをどうぞ。
最新話の時間軸では、キャラの年齢はそれぞれ三歳ずつ増えています、ご注意を。
第二部 第一章 ◆設定集「キャラクター紹介(第二部)」
https://kakuyomu.jp/works/16817330663201292736/episodes/16818023213769173188
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