第七話: 欠食時代を振り返る
とある日の朝、だだっ広い農地の片隅。
なんとなしに見渡せば、辺り一面、すっかり茶色くなった地面ばかりが目に入る。
収穫を終えて次の
そうして
最初にイナゴの大群を
鳥のジャンボが落としていった多数の大岩を崩す人手も時間もなく、クレーター状に
たとえ畑に作物の姿がなくなろうと、秋耕地に
『始めの頃は余裕がなくて、村人同士、寄ると触ると喧嘩していたな。食糧が減らされてきたら、そんな気力さえなくなって今度は冷戦状態だ。あれも険悪で居たたまれない雰囲気だった』
「ホント、最近の村で起こってる
栄養価などなさそうな、紙か何かを思わせる食感のイナゴ肉を含めたとしても
そんな状況で
栄養失調から病気をこじらせ、亡くなる子どもや年寄りがいた。
先行きへの不安から暴動が起こり、巻き込まれてしまう
すべての食糧を一括管理していた領主の倉を襲い、厳罰に処された者まで。
挙げ句、狩猟と採集のために
それでも……。
結局、翌年の収穫までの間、我が領では直接の餓死者だけはゼロに抑えることができた。
その最大の救いとなったものが、ダンジョンで見付けてきた奇妙な
どうにか村の畑に根付かせることができた数本ばかりの牧羊樹は、乾期が訪れるまでに数十頭……もとい、数十個もの元気な
一個の果実から取れる肉の量でさえ、数百人いる領民全員の食事一日分にも迫るほどであり、生きたヒツジとして長期保存できるため加工は不要、栄養価に関しても申し分ない。
お
「後から聞いた話だと、同時期の他領では早くも相当な数の餓死者が出ていたらしいから……」
『と言っても、うちだって飢えを
「あの頃は……みんな、おかしくなりかけていて怖かったよ。モントリーを潰して食べようとか言い出すバカもいたっけ」
『うん? あー、あぁ、思えば、お前も
いざというときの足になるオオスズメをたかだか数人分ないし数食分の肉にするなど、実際、ありえない話だが、楽天家の奴は発案者にキレちらかすほど危うい様子を見せていたものだ。
――お前らにも焼き鳥にされる気持ちを味わわせてやろうか!! どいて、ノブさん! そいつら!
『いや、うん……僕は何も聞かなかった。見なかった。忘れよう』
さておき、とうとう食糧の底が見え始め、エルキル領も進退極まったかという乾期の終盤――。
「これに助けられたというわけなんだよ」
「「「おおお~っ!」」」
片手を大きく横へ伸ばし、
その視線の先には、真っ赤に燃え盛る一本の樹が生えている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます