第四話: 起き出す村、従魔と冒険者
朝の見回り……ではなく散歩を再開した僕は村の中の通りをぶらぶら歩く。
「それにしても、よく発展した開拓領ですね。一年前、
「あはは、たまたま大量の石材が手に入ってしまって処理に困ったもので」
この時間はヒマなのだろうか、アドニス司祭も同行することとなり、僕の隣を歩いている。
「オットモー♪ オットモー♪ オトモシャボテンー♪」
「あたま……あたま……あたま、さわって?」
少し先をのそのそ歩くナイコーンさまの
通常のアンガーウサギで体長七十センチを超える個体など見た覚えはないのだが、よほど村の水が合ったのだろうか。
そんなことを考えていると、不意に会話が途切れた。
「あのアルミラージ……実に、興味深い」
「やっぱり変わってますか?」
「いや、普通はアルミラージを観察する機会などありませんので、比較のしようもないのですが。そもそもテイムされたアルミラージというだけで前代未聞の存在と言えますよ」
「テイム?」
「魔獣を
「従魔……ああ、モントリーみたいな」
「ええ、そうした低位の魔獣を幼体のうちから
ナイコーンさまが僕の従魔なのではないかという推測は、父母や冒険者の口からも出ていた。
しかし、詳しく話を聞いたわけではなく、アドニス司祭の説明はどれもこれも初耳である。
『結局、従魔とは違うのか。だとすると……ふむ、ここは【
「それはさておき、モントリーが隷属関係だったというのは、僕としてはかなりショックだなぁ。単に
「いえ、スパローディアトリマ――モントリーは人に
と、そんな取り留めない話をしつつ、三人と一匹、拾い歩きをすること
「いよーう! そこ行く白坊ちゃん! 今朝もお気楽そうだなっ!」
「チーッス!」
「ちょっと、アンタたち! お貴族さまや司祭さまだよ。いいかげん、変な絡み方やめなってば」
気が付けば、幅広い村道の後方より、足早な一団が追いついてきた。
その中よりチャラチャラした態度で声を掛けてきたのは最近見知った三人組だ。
「やあ、ライレにアザマース。あははっ、君も大変だね、シイリン。三人ともおはよう」
「フフッ、ごきげんよう、少年少女たち」
気安く挨拶を交わした少年二人と少女一人を合わせ、集団は総勢十五名余り。
他の皆は
まだ朝方の時間帯にも
と言っても、目の前にいる三人組【真っ赤な絆】だけは初級冒険者
初級冒険者とは、見習いの雑用係であり、まだ正式に冒険者と名乗ることすら許されない。
確か、年齢はいずれも成人前後の
木製の大きな
丸い金属球を付けた棍棒――
そして、軽装で手ぶら、黒髪ショートに短めポニーテールの真面目そうな少女がシイリンだ。
「ふへっ、今度こそマジやっべえもん取ってきてみせっから楽しみにしてろよな」
「見てろよ。俺らがこんなド田舎に
「ふふん、僕のコレクションに加える価値がある珍品は初級の君たちには難しいと思うけどね。まっ、こないだの銀色に光るゴミダマはなかなかだったけど」
「はあ? いやいやいや、ナメてもらっちゃ困るっしょ」
「そうだぜ! もう昇級間近の俺たちを捕まえてよ!」
「ああん、もぉ! バカ男子! 本当にそろそろ
「そぉこのヒヨッコども!! なぁに、ちんたらしてんだい!」
「「「ひゃあ!?」」」
突然! 雷鳴の如き
「おはよう、ジェルザ。【草刈りの
「なんだ、誰かと思えば
現れたのはお
六人組の頼もしき中級冒険者
今では、先任として他の冒険者たちからも一目置かれる存在となっている。
「無用の心配でしょうけど、どうかお気を付けて」
「フ……武運をお祈りします。勇敢なる冒険者たちに女神レエンパエマのご加護があらんことを」
「あいよ! ほら、さっさと行きな! ヒヨッコども!」
「は、はい」「へーい」「うへえ」
「合わせなっ!」
「「「はい!」」」
新米三人組を追い立てるジェルザに続き、他の大鎌メンバーたちも僕らを追い抜き、先へ行く。
「いってくるぜえ」「坊ちゃんも頑張れよ」などと声を掛けてくるのは良いとして、頭ポンポン、背中バンバン、全員で
僕も数え年で九つとなり、身長で言えばもう一四〇センチ近くもある。
そろそろ子ども扱いは卒業とさせてもらいたいものだ。
通りの先、通り過ぎていった
『だが、まぁ、よく働いてくれる。冒険者たちの常駐は有り難い限りだよな』
「うん、開拓地じゃ有能な人材はいつでも大歓迎」
彼ら冒険者の目当ては、村の近隣にある
実は、近頃、あの不人気ダンジョンが再評価を受けつつあるのだ。
ダンジョン内部に立ちこめる
加えて、ザコオニやゴミダマから取れるクズ魔石の需要が、日に日に領内で高まっていること。
ここ数年の不景気により食いつめた駆けだし冒険者には、これらが
現在、なんと六組もの冒険者
彼らが持ち帰ってくる素材……特に、大量の魔石とダンジョン産の木材は、もはや村にとって欠かせない資源となりつつあった。
また、領内の人口が増えたことに伴う治安悪化が、彼らのお
今後ともよろしく付き合ってゆきたいものである。
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