第二十九話: 一閃! 草刈り鎌
「ギェエトジュース! シェシェシェ――」
意味不明な呪文?を呟きながら、人面の魔獣ヒーシーが駆け出した。それは放たれた矢の如く!
「……ッチ!」
「ぬう! 来るか!?」
ヒーシーが走るのは相対していた【草刈りの
そのニヤニヤ旋風の中心、六人の冒険者は密集して防御陣形を取っていた。
かろうじて
いや、そこは
が、まるでタイミングが合わず、刃をかすらせることすらできていなかった。
『まさか、奴の方がすべて回避しているのか!? あの速さで周りの動きが見えているとでも?』
「何にしても、あんな全力疾走、いつまでも続けられるはずないさ。このまま待っていれば――」
「うげえっ!」
刹那、目にも
ジェルザさんが素早く彼を蹴り飛ばし、辛くも魔獣の爪は空を切っていったが、さもなければ今頃は首を斬られて死んでいたかも知れない。
「なんて速さだい! どっから来るかも読めない! 何度も止められる攻撃じゃないねえ!」
グルグル回り続ける残像のニヤニヤ笑いを前に、ジェルザさんは大きく
「仕方ないね! アタシがやる! おまえたち、しくじんじゃないよっ!」
「「「「「ういっす!」」」」」
リーダーのその声に応じ、後衛三人、前衛三人、それぞれで二重の
それは、守りが薄そうな後衛の魔術師さんや
突然、辺りに響き渡る激しい衝突音!
金属同士がぶつかったような鋭い高音と重い物同士がぶつかったような鈍い打撃音がほとんど間を置かず同時に鳴り響いた。
気付けば、宙をそれぞれ逆方向へ向かって吹き飛んでいく二つの巨体が目に入る。
一方の、
もう一方、激しい勢いで水平に飛ばされていくのは……身を
「え? ジェルザさん!? どこから? だって、みんなと一緒に円陣を……」
「よく見るのだ、シェガロ。お前もやられたことがあっただろう」
『分からなかったか? あえて陣形に穴を作ってヒーシーの攻めっけを誘ったジェルザさんが、
「あ! そこにいるのに、一瞬いなくなったように見えるアレか! あの逆!?」
そう、よく観ていれば、円陣を組み始めた時点で既に大鎌メンバーは五人だけになっていた。
高速で走り回る魔獣は
生まれた
それを見逃すような中級冒険者たち……いやさ、【草刈りの大鎌】ではなかろう。
吹き飛ばされたヒーシーが着地するよりも早く、彼らは追撃に移っていた。
戦士さんの曲刀が!
しかし、最後の力で彼らを引きはがすと、尻尾を大きく一振り! 再びヒーシーは駆け出す!
「ハッ! させるわけないだろう!」
と、行く手を
二つの巨体は一瞬で距離を縮め、されど、今度はぶつかることなくすれ違う。
――シャア! キィー……ン……。
遅れて一筋の光が閃いた。
気付けば、ジェルザさんの構えが大鎌を正面に振り抜いた
「……武技【
その
二本の後ろ脚を斬り飛ばされ、どうっ!と地を
残った前脚でなおも身を起こそうとするが、魔術師さんの高らかな
それがトドメとなったのか、遂に魔獣はすべての動きを止め、大地に沈んだのだった。
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