第五話: 猛女と幼児、責任問題
「待ちな! まさかと思うが、
村外れでの朝仕事を終え、家の前まで戻ってきた僕らを出迎えた女性冒険者のジェルザさんは、仁王立ちでこちらを睨みつけ、怒鳴るような勢いでそう問いかけてきた。
五歳の
「え? はい、今回は皆さんと一緒にですけど――」
「おう! おまえたちっ!!」
「「「「「へいっ!」」」」」
と、僕の言葉が終わるのも待たず、ジェルザさんはパーティーの仲間たちを
「どういうことだい!?」
「あ、あのですね、
「俺らァ、ええと、ああ! 耳長ちゃんたちが大変だろうと思って、ですね」
「……危険はなか――」
「そういう話じゃあないんだよ!!」
しどろもどろに弁明していく男たちが一喝される。
凄い迫力だ……思わず僕までビクッと
「や、でも、ホント! 茂みの
「しっかり俺たちで周り固めて――」
「みなまで言わなきゃわっかんないのかい! ボンクラども!! ンな
ふと、僕の背に隠れているはずのファルが気になり、そっと振り返って様子を見てみる。
そろそろ恐怖が極まって泣き出してしまってもおかしくない頃合いかと思われたが……。
「ほへぇー……」
ファルは限界を超えて逆に落ち着いてしまったのか、長い耳を
……やっぱり、けっこう図太い神経をしている気がするな、ファルは。
おっと、それはさておき、さすがにこれ以上は冒険者の皆さんに申し訳ない。
いい加減、ジェルザさんの怒りの矛先を変えてあげた方が良いだろう。
今回の件、責任は間違いなく僕にあるはずなので。
【草刈りの
僕はファルを後に残し、そちらへ向かって足を踏み出していく。
「すみません、良いでしょうか?」
「なんだい、
「いえ、あまり皆さんを責めないでくれませんか。これについては僕がお願いしたことですから」
「だろうね! だからアンタとそっちのチビっこいのは後で親にガツンと叱ってもらうと良いさ! けど、こっちはプロなんだ!
「「「「「へいっ!
うーむ、困ったな。彼女の言い分はとてもよく分かる。
ちょっと分かりにくいか?
詳しくは説明しないが、事前に職場や保護者の承認を得ていない限り、相当な問題行為となる。交通事故でも起こした場合を考えるまでもなく、単なる引率や送迎だけであっても、だ。
「でも、実際に危険なんて無かったわけで……」
「ああん?」
思わずポツリと漏れた僕の呟きに、ジェルザさんが反応する。
「
「え? いえ、そんなことは……」
「なるほどねえ! そのナリでゴブリンを何匹も倒しちまうんだ! 確かに大したもんだよ! だが、万一ってのはあるんだ! ガキのうちから調子こいてちゃあ、泣きを見ることになるよ!」
耳が痛いな。
どうにも楽観的な自覚はある……と言うか、なに余計なこと口走ってるんだ、僕は!
「……はい、肝に銘じて、おきます」
「ほう、まだ、あんまり納得してはいなさそう――」
その言葉と同時、目の前にいたジェルザさんの姿が消える。
「――だねえっ!」
声は下方より響いた!
百センチちょっとしかない今の僕の背丈より低く、地面すれすれに身を沈めたジェルザさんが、地面を払いながら、こちらの足を刈り取る下段回し蹴りを繰り出したのだ。
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