第六話: 楽天的な僕
ジェルザさんの攻撃を認識した瞬間、僕は垂直ジャンプし、丸太の如き脚を回避していた。
「な、いきなり何すん――!?」
着地した僕は、すかさず彼女の凶行を
「きゃっ」
と、背後で小さな悲鳴が上がる。
振り返って見れば、ざっと
彼女の片腕には……ファルが抱き上げられていた。
「
「わぁ、たかーい! たかーい!」
いや、分かってはいる。
冒険者たちが周囲を警戒し、僕が側に付いていたとしても、草の根元に空いた小さな巣穴から恐ろしい毒蛇が飛び出し、ファルへと襲い掛かる……そんなことだってあったかも知れない。
隅々まで村人たちの目が行き届いた村の中とはわけが違うのだ。
「納得したかい! 自分だけの問題じゃなかったってことをさ!」
「はい」
「ぜるざおねぇちゃん! はやい! すごいねー! さっきのもう一回できる?」
「ちびっ子! アンタもあんま危ないとこに付いてくんじゃないよ! 分かってんのかい!?」
「きゃー! おっきな声!」
「……親に言っとかないとダメみたいだねえ、こりゃあ」
その後、改めて男たちを叱責し始めたジェルザさんに
ファルを家まで送り届け、彼女の家族にジェルザさんからの言付け――今朝の出来事を余さず告げると、父親は頭を抱え、母親は目を吊り上げていた。
「ばいばい! また後でね、白ぼっちゃん!」
「うん、じゃあね。……たぶん今日はもう会えないと思うけど」
いや、この子のことだし、案外ケロッとした顔で遊びにやって来るかも知れないな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、僕の方はまだ朝の仕事が残っているし、後には両親に叱られるイベントも控えている。
そう考えると、少しばかり気が重くなってきた。
……まったく、まるっきり子どものような考えなしの性格が嫌になる。
こんな
「またあの子のことか。そんな風に
『それはまぁ、外見だけはそうかも知れないが……って、おい! いい加減、ヘタレとか呼ぶの
「お前が頭の中で
『こちとら考えることしかできないし、お前以外に話し相手すらいないんだ。仕方ないだろう。気に入らないなら、そろそろ僕の
「やだよ。もう怖いのや痛いのに耐えるときだけ呼び出されるのはまっぴら御免だね。ず~っとしんどいこと押し付けられてきたんだから、今度は役割交替と行こうじゃないか」
『……そこは申し訳ないと思っているよ』
たった一人、村の中を歩く幼児――シェガロは、
そう、
僕ことシェガロは、前世の記憶を持つ異世界転生者である。
が、実は、前世の僕である
僕自身、それをハッキリと認識していたわけではない。
ただ、
では、そのとき、僕の身体を動かしていたのは一体、どこの誰だったのだろうか?
「覚えてないだろうけど、他にもいろいろと僕が肩代わりしてきたんだよ? 感謝してほしいな」
つまり、今現在、僕の新しい
この、もう一人の僕“楽天家”なのだ。
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