第二十三話: 大迷宮に挑む一行
ベア吉を中心とし、その左右を僕と月子が
特に打ち合わせをするでもなく、自然と、僕たちはそうした隊列を組んでいた。
付近の音を周りへ漏らさなくさせる風の精霊術【
「みゃっ!」
僕たちの耳にだけ聞こえる、そのヒヨスの鳴き声は警戒を意味した。
一斉に足を止めれば、長い尻尾が伸びてきて右手の方向を指す。
「扉の中か。
【
――カシャン、カシャン……カタカタ……。
「ああ、イヌボーンだ。
「食べられませんものね。どういたしましょうか?」
「この通路に敵は残しておきたくはない。とりあえず倒しておこう」
「はい」
月子へ声を掛けた僕は、その返事を聞くと同時、ドアに備え付けてある取っ手にも触れぬまま、いきなり足で
もう既に幾度か訪れているため、扉をくぐった先が右手方向へ伸びる幅と奥行き二ブロックの玄室だということは把握済みである。
ああ、一ブロックは、
僕たちが現在いる回廊――
つまり、この玄室の間取りは、扉を出て右へ伸びる一辺十二メートル近い正方形というわけだ。
そこに群れなすのは五体の……直立する
いや、
ただし、人間の骨とは
怪談と間違えて登場したのではないかと思われるこいつらは、この大迷宮に
イヌマンは、まさに直立した犬といった外見をしているのだが、毛ではなく柔らかな鱗を持ち、金属武器を
そのイヌマンの骸骨であるイヌボーンが五体、玄室へ躍り込んだ僕に気付き、小さな剣や杭を振り上げて一斉に向かってきた。
舌や声帯がないため吠え声を上げることもなく、されど、筋肉もないのに繋がって動く関節を奇妙にカタカタと鳴らして、その姿は見えない糸で吊られている
元の世界で学園内に一体でも現れたら失神者続出、大騒ぎになるであろう不気味な姿だ。
「ま、もう慣れたけどな」
奴らが動き出すよりも早く、僕はその数と位置を確認して駆け込んでいる。
一番手前の一体にまず突進の威力を乗せたスコップを突き込み、
頭の頂点から左右へ別れていくイヌボーン3の、それぞれの
「ああ、一人で全部はやれなかったか……」
その呟きへ被せるように、ベア吉のぶちかましとヒヨスの尻尾攻撃が残る二体のイヌボーンを粉々に砕き、大きな粉砕音が玄室内に響き渡ったのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
数日間の探索により、この大迷宮については
既に、フロア最外周をぐるりと囲む回廊の存在が明らかになっており、迷宮全体の形状が
しかも、先のイヌボーンを初めとする様々な
いかにも猛毒を持っていそうな大グモ、人でも喰えそうなサイズの食虫植物、カピバラ並みに大きなドブネズミ、岩の甲羅を背負ったカメ、かつて倒した
幸いにして、もはや僕らの敵になるような存在ではなく、食用可能な普通?の動植物も
不思議なことに、この迷宮内では、
そうした場合、後には、例の
おそらく、自動的にゴミ処理や清掃を行う機能が備わっているのではなかろうか。
どうやってゴミとそうでない物とを判別しているのかは不明だが……。
まぁ、そのお
未だ、声の主の居場所については目星が付いていないものの、そんなこんなで、僕らは順調に大迷宮の探索を進めることができていたのだった。
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