第十七話: 異世界生物に困惑した二人
それは、僕たちがまだ異世界へ来て間もない頃、巨大グマの死体を解体したときのことだ。
獣の解体をすること自体、ほぼ初めての体験だった当時の僕らではあるが、それはどう見ても地球の動物にはありえない特徴として、
胴体のほぼ中心、心臓の下、肝臓の裏側辺りに存在した大きな石のような何か。
初めは
やがて、雪原で狩猟を始めた僕たちは、どの生き物も体内に同様の石を持つことを知る。
色や大きさは種類ごとにまちまちながら、形や質感はほとんど変わらないそれらに、異世界の不思議をまた一つ実感したものだった。
とは言え、何の役に立つでもなく、精霊術で加工することもできない小さな石である。十個も集まった頃には二人ともすっかり興味を失い、手に入れる度に倉庫へと放り込むばかりとなり、次第に存在すら意識しなくなっていった。
「本当に何の役にも立ちませんでしたから」
「ああ、最初は
それらが少しだけ脚光を浴びたのは、チビどもを養い始めた頃である。
こいつらのエサとして、僕らは解体時に余る内臓を主に与えていたのだが、この石も気にせずバリバリ食べてしまう様を見て、試しに倉庫の一画で小山を成していたソレをやってみたところ、どうやら好物らしいと判明、それからは処理を任せることになったのだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「食べたのはあの石か!? ケオニも体内に持っていたんだな?」
「にゃあ」
「ベア
「わふっ」
そうだったのか。
「なんにせよ、お前が元気になってくれて嬉しいよ、ベア
「ええ、本当に良かったです」
「にゃっ」
どうやら必要だったのは石だけのようで、二頭はもう戦士ケオニの遺骸には興味を示さない。
ケオニとベア吉は少し似たところがあるので、共食いに目覚めたのかと心配してしまったが、そうでなくて一安心だ。
「わふぅ!」
「な、なんだ? どうして怒ってるんだ」
「また
「別におかしくはないぞ。ベア吉とケオニが似てると思っただけで――」
「ばわっふぅ!」
いや、毛むくじゃらだし、すぐに
一層強く
「それはそうと、お前ら……だ!」
言いながら、生き埋めになっている二人の弓ケオニへと目を向ける。
月子とチビどもも
ここまで、やけに大人しく、まるで殊勝な態度で
胸から下を固い地面に埋められ、身動きが取れず両手だけを地面に広げる二人の前に座り込み、あぐらをかいてスコップを地面に突き立てた。
「ギギッ」
「ギギギッ」
小さな声を上げ、拳を握り、二人はこちらを
「やっと落ち着いて話を聞いてもらえそうだな」
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