第八話: それは錘の一刺
周囲を取り囲むかのように扇型陣形を成し、触手による
奴らの粘液状の体に火種を埋め込み、全火力を
それが最も有効な攻撃だと分かった後、僕は余裕を持って――まぁ、敵群の攻撃を
だが、親バルバスに飲み込まれる
「月子くん! くっ、邪魔だ! どけ!」
風の精霊術【
「
――ドゴオオオオオッッッ!!
が、それが効果を発揮するより早く、突如、親バルバスの粘体が内側より弾け飛ぶ。
遙か上空へ向かって唸りを上げながら飛んでいく大きな何か。
後に残るは直径二メートルの真円形にぽっかり空いた穴、その向こうに美須磨の姿はあった。
「放しなさい」
バルバスの巨体に空いた大穴は、驚異的な再生力により見る見るうちに塞がっていくが――。
――ドゴオオオッ!!
再度、射出された物体――円錐形の石杭によって再生した以上の体積を
「それを、返してください」
おそらく人の言葉など解しはしないだろう不定形生物は、当然ながら彼女の言葉を無視し――。
――ドゴオッ!!
三度、身を抉られる怪物。しかし、今度の石杭は遠くへと飛び去ってゆくことなく、その場に留まったまま高速で回転し続け、粘体を絡め取り、引きちぎり、もはや再生することを許さない。
それはドリル、いや、
「それは大切な物です。返しなさい!」
――て……ぇり……。り……。
同時に、まだ
「
その美しく透き通った声が響き渡ると、いまだ回転し続けていた錘がゆっくりと動きを止め、先端からバラバラの石片へと変わってゆき、雪上に敷き詰められて一面の石畳を作り上げた。
もう聞こえてくるのは吹きすさぶ風雪の音ばかり。
そんな中、カツンカツンと足音を鳴らしながら少女は歩を進める。
石畳の外れ、そこにそれは転がっていた。
汚らしい粘液に
拾い上げて汚れを
「それを取り戻したかったから、戦うことに
子バルバスの全滅を見届けてから彼女の
「はい、
心なしか、いつもよりも微笑みを深め、美須磨はそう言葉を返してくれる。
そんなに気に入ってくれていたのか。
僕は嬉しいだけじゃない不思議な感動を覚え、何故か無性に熱くなってくる顔を持てあまし、目を
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そこからの帰途は順調ではあったが、予定外の戦闘により、拠点へ辿り着くことができたのは【
やはり三時間という活動時間は極めて短い。
今日のように予定外の出来事があれば、すぐに足が出てしまうことになる。
これまでは、
今後、生身の洞外活動をするような羽目に
さて、今回の顛末としては、戦闘の疲労と緊張に加え、前述の軽い高山病が
まぁ、夜にはすっかり快復したので、結果的には良い骨休めになったと言えなくもない。
ちなみに、あの
……もしも次に出くわすことがあったら絶対に相手せず、
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