第五話: 二人と土笛の音
今、
迫り来るは、視界を埋め尽くさんばかりの巨体を誇る怪生物。
この世界にやって来て、何種類かの生き物を見てきた僕たちだが、ここまでの大きさ、いや、こんなにもおかしな生態を持った奴は初めてである。
それは、まさしく
「つ、月子くん! 一旦距離を取って仕切り直そう」
「待ってください! もし、
「落ち着くんだ、君らしくもない」
「でも!」
いや、得体の知れない相手とやり合うのは避けたい。
逃げてくれるなら、それはそれで……。
どうすれば良い? どうするべきだ?
僕は行動の選択肢すら上手くまとめられず、空で渦巻く黒雲が落ちくるかのような圧力を
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
場面は変わり、時間が少し戻る。
僕たちは
もちろん、僕と
美須磨が作り上げた石英ガラス製の箱罠は、大きな透明の箱に
当然、箱は入ることはできても容易には出られないような構造となっている。
この罠によって捕まえることができたのが、モグラのように雪中を掘って生活しているらしき奇妙な鳥――余すところなく
平均して二日に一羽くらい
今日も最初に見に行った罠で一羽掛かっており、
しかし、そこで急速に空模様が悪くなってきた。
「残念ですけれど、このまま
「まぁ、
「そうですね。
つるはしに似たお手製の登山杖――
その彼女の後ろから、
歩き出して間もなく、いきなり辺りが暗くなり、風が強く吹き出したかと思えば、
僕らの身を守る【
ヘタをすれば、すぐ前を行く美須磨の姿も見失いかねないため、気を抜くことができない。
――リ……リ……。
「
突然、耳へと飛び込んできた奇妙な音。
僕は、あのストーカー対策で身に染みついた反応により、反射的に精霊術【
瞬時に巻き起こった
しかし、三百六十度、辺りを見回しても特に変わった物体や反応は見られない。
「
数メートル前を先導していた美須磨が歩を進め、
近付いていって雪面に目をやれば、そこには雪で巧妙に隠され非常に見えにくくなっているが、左右へ七メートル以上、幅にして四十センチに
「これは、クレバスか……。まるで落とし穴、相当深そうだ」
――リ……リー……。
どうやら中へと吹き込んでいく風が、こんな
「これは……もしも立ち止まっていなかったら、気付かず落ちていたかも知れない」
「ええ、あぶないところでした」
「風の
まぁ、こういった危険な地形を警戒して、先導する
「あー、でも行きでは確かこんなとこを通らなかったな。道を
「そのようです。気を付けていても方角がずれてきてしまいますね」
「こんな雪では仕方ないさ。最悪でも岩壁の方へ向かってさえいれば大きな問題はない」
「はい、それでは
――かたん……ことっ……り、りー……。
と、会話をしていた僕らの耳にまた別の異音が飛び込んでくる。
そして、その音に対して
――ぇっリ、リ!
クレバスの奥から何かが飛び出してきた。
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