―― 第三章: 二人で踏む雪原にて ――
第一話: 雪の尾根を巡る二人
「
火の精霊術【
前方を走っているのは真っ白な小動物――ウサギだった。
一見すると普通のウサギなのだが、動き自体が非常に速いことに加え、雪に覆われた景色へと溶け込む自然な保護色により見失いやすく、
しかし、向かっていく先や飛び込んだ雪の周りへ絶え間なく火の玉を撃ち込んでいくことで、どうにかギリギリで逃さずに済んでいる。
とは言え、それもそろそろ終わりが近い。
「追い込む!」
一声大きく叫び、僕はウサギの進行方向正面と左側一帯に連続で火の玉を撃ち込んでいく。
燃え上がる火と瞬時に解けた雪によって逃げ道を塞がれたウサギは、残った右前方へ向かって思いっきり飛び跳ねる。
が、突然、空中で
直後、ひゅん!という小さな音が風を切り裂くと、ウサギがいる辺りから何かが飛び上がり、行く手に目をやれば、直前まで誰もいなかったかと見えた右手の方に白い毛皮をまとった一人の少女の姿。
その手には大きめの
「お見事! みす、月子……くん」
「くすっ、
言うまでもないだろうが、もちろん彼女は
その身を包む灰色の
更に、巨大グマの毛皮と同様、【
そして、彼女が手に持つ大振りな
完全な状態でまるまる二本手に入った牙は、それぞれ刃渡り三十センチ近い曲刃の短刀となり、揃って
そう、先刻、飛び上がったウサギの首を切り裂いた一撃である。
ちなみに、
なんとなく、あの魔法の毛皮と一対の短刀は、彼女にこそ
閑話休題。
僕は仕留められたウサギを拾い、彼女の
「そろそろ獲物も十分だろう。一旦戻らないか?」
「はい、それにしても今日は大猟でしたね」
「ストーカーを倒したからかもな。おそらく山のヌシみたいな存在だったんじゃないかと思う」
「もしかすると、あの大きなクマもそうだったのかも知れませんね」
「ありえない話じゃなさそうだ。どちらも二頭目と出くわす気配はないし、あれ以来、明らかに小動物の姿が増えてきている」
そんな話をしながら、僕らは雪原の中で
僕の胸ほどの高さに盛り上がった小さな岩山は、周囲に点在する他の岩と比べると、まったく雪を被っておらず、明らかに不自然な
「
当然、それは僕らが作っておいたもの。
採集物や獲物を積み込んでおく
僕たちは現在、下山する準備を
精霊たちとの親和を深め、精霊術の効果を高める。同時に物資を集めて道具を作る。
ストーカーを倒してから既に一週間が経つ。
それらは順調に進められつつあった。
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