第三話: 寝覚めと覚醒
岩壁のやや高い位置にある
一歩二歩と
――とさっ……。
その物音に
「美須磨!」
呼吸も忘れ、慌てて
抱き起こそうとして
しかし、普段は輝かんばかりの顔色を暗い色彩に染め、激しく呼吸のペースを速めた様子は、とても平気そうには見えない。
「……はぁはぁ……すみませ……はぁ、はぁ……はぁはぁはぁはぁ……ぃき、です……」
「無理に喋るな。ひぃ、ふぅ……悪い、少し我慢していてくれ」
僕は、ショルダーバッグを拾い上げて自分の肩に掛けた後、彼女の腕を取り、もう一方の肩を貸しながら立ち上がらせる。
そのまま歩き出すも、相変わらず二人の歩みは嫌になるほど遅い。
目に見える場所までの、一〇〇メートルそこらの距離を進むのに何分も掛かってしまった。
よろよろとしながら、ようやく洞穴の下――雪の小山に辿り着き、それを
すると、目の前に
「うわっ……! な、なんだ?」
美須磨に肩を貸していなかったら、思わず飛び
こんなに間近で見るのは初めての――いや、おそらく地球に
だが、それはピクリとも動かず、胸辺りから後ろを雪の小山に埋もれさせ、頭部からは大量の血を流している。と言うか、激しい凍気により身体も血も既にほとんど凍りついている。
死後間もない? 運悪く先ほどの落石でやられた後、
どう見ても既に死んでいた。
気にはなることは多々あるが、ひとまず今は関係ない。
目を
近くで見てみればなかなか大きな穴のようだ。
もしかすると、あのクマの巣穴だったのかも知れない。
中にまだ
それはそうと、洞穴は思ったよりも高い位置にあった。
あのシャッター街の路地裏、
だが……。
すぐ
お互い、あのときのような動きは
いや、あの塀と違ってこの岩壁には多少の
「……もう
「……はぁはぁ……はい、どうにか……はぁ、はぁ、はぁ……」
「お互い……引っ張り上げる、のは……無理だ……はっ、はっ、はっ……。それぞれで、登るとしよう……」
と言ったものの、もはや寒さにより手の握力がほとんどなく、少し試してみただけで洞穴まで上がるのが困難であることに気付く。隣の美須磨に至っては、動くことすら
どうする? 休憩して体力を回復したら――いや、これから
『いかさま?』
どうして僕はそんなことを思った? ギャンブルなんて大して興味がない、せいぜい、友人と遊びでカードゲームをするくらいの僕が何故……って、あ! そうか!
「――
……違う、そうじゃない。神ちゃんは何て言っていた?
『――えっと、えっと、つまり、要するに分子や原子に言うことを聞かせられる能力?――』
「
『――って相手に向かって呼びかけてからやってほしいこと言う感じです。――』
「
……なんとなくだが、手応えはある? だが目に見える変化は何も無い。何がいけない?
『――回りのものにですね、
地面が言うことを聞いてくれないんだが。どうすれば良いんだ? 神ちゃん!
脱線ばっかしてないで使い方をしっかり教えておいてくれないかな。頼むよ、おい! おーい!
「デ、
横手より響く
たとえ絶え絶えであっても
そして、彼女の
「うわあ! 何だ、このイリュージョン!? これだけの岩がどこから? ……ごほっごほっ」
「――急ぎ……ましょう……はぁ、はぁ、はぁ……」
「あ、ああ……」
思わず
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