第四話: 二人の精霊術
さして時間もかからず洞穴の入り口に辿り着くことができた、が。
『ぐぅっ、獣臭い!!』
二人で肩を組みながら通れるほどの広さがある入り口を抜けた途端、自慢の丸い団子鼻でさえ曲がりそうな臭気が襲ってくる。
ここは、やはり表で死んでいる巨大グマの巣穴だったようだ。
内部の広さはちょうど六畳間くらいだろうか。特に目立つ物が無い、がらんとした岩屋である。
貯め込まれた餌、食べ残し、まとまった抜け毛、
もし平時であったら即座に外へ飛び出していっているところなのだが……。
入り口が広いため、風は入り込んでくるものの、外の吹きっさらしに比べれば寒さは段違い。
少なくとも、雪が吹き込んでこないだけでもまるで違うだろう。
現状の僕たちにとっては、こんなであっても他に望むべくもない優良物件と言える。
「せめて、掃除くらいは……しておかないと、病気になりそう……だけどな」
「……精霊に……はぁはぁ」
「ああ、そうか。何かに頼めば――」
この場合はどんなものに頼めば良いだろう? 汚れ? 空気?
「
ピクリとも反応しないな。恥ずかしさがこみ上げてくる。なんなの、もう……。
「
小さな
おお、何故か美須磨の声には反応するんだな。
先刻の石段のような
僕と彼女の才能の違いと言われればそれまでだが、いくらなんでもまったく無反応というのはおかしい気がしてきてしまう。
うーん、さっき僕は何と言ったんだったか。
ならば
もっと広義に呼びかけるのか? 具体的な願いを込めて?
『――水でも火でも空気でも地面でもお願いすれば自由に操ることができるんです。――』
「
――ビュウォオオオッ! 突如として、洞窟の中に凄まじいまでの旋風が吹き荒れる!
今度の反応はあまりにも劇的だった。
その勢いは僕たちの身体を
濃い
できた! 危機的状況にも
なるほど、こんな風に呼びかければ良かったのか……いや、待て! これなら、もしかすると!
「
よし、空気が流れ込んでくる。……が、これはただの風だな。何となく戸惑っているような?
命令が少し分かりにくかったか? それに、何か、もっと……精霊術……精霊か……。
「
通じるか?と思いつつ口に発してみれば、どうにか理解してくれたのか、外から風が緩やかに流れ込んできて、そのまま出ていくことなく留まってくれている。上手くいきそうだ。
それから、これもやっておかなければならない。
「
この願いは期待通りの効果を発揮した。
僕自身の
と言っても、僕の中にある何らかのエネルギーが使われた様子もなく、熱量保存の法則はどうなっているのかと頭を抱えたくなるが、恩恵を
プラシーボかも知れないが、早くも体調が楽になってきた気さえしてくる。
「あとは……また
そう言えば、先ほどから
慌ててその姿を捜せば、岩肌剥き出しの床の壁際に広めのレジャー用ビニールシートを敷き、いつの間に預かっていたのを返したのだったか、ショルダーバッグを枕にし、毛布に身を
……うん、そうだな。疲れたもんな。僕もやることだけやったら一旦休むとしよう。
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