第6話 赤と黄色の反転世界①

 小一時間ほど可愛い猫とずっと目が合いっぱなしだ。

 というのも、餡蜜屋ですももちゃんからもらったペットボトルのキャップが次の行き先の何を示しているのか全く見当もつかず、ずっとこの蓋に貼られたシールを眺めることになってしまったのだ。

 心なしかシールの猫も最初より眉がハの字になっている。ような気がする。


いや、そろそろ動かないと。日帰りなんだから。


もし次の行き先がこの地でないならいい。けどここでまだ行かなければならない場所がある場合そろそろ行き先がわからないと困ってしまう。

 このままキャップとにらめっこをしていても埒が明かないので、ベンチから立ち上がる。するとキャップが手から滑り落ち、どこかへと転がっていく。


まずい


人混みの中、慌てて転がるキャップを追いかけていく。

 追いかけた先はボート乗り場のようだった。湖の湖面に映る反転世界の紅葉が綺麗で、綺麗だという感想しか思いつかない。自分のつまらない人間さ加減に、思わずため息が出る。

 何ということだろうか、どうやら気づかぬうちに転がるキャップに次の行き先まで案内されていたようだ。キャップを拾い上げると、幽霊の老夫婦に出会った。

 肩を叩かれたと思えば、目の前に幽霊。俺じゃなかったら叫び声を上げているか、もしくは目の前の老夫婦が幽霊だとは気がつかないかのどちらかだろう。



「貴方方も撮影ご希望ですか?」



尋ねると、首を縦に振りながらボートを指さした。なるほど、幽霊だけで乗っていたら不自然だから俺にも同乗してもらって、この美しい景色を背景に撮影してほしいということか。

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