第4話 すももの餡蜜①
高校生くんとおじいちゃんが知っている地名を教えてくれたので、日にちは空いてしまったけれどそこへ向かってみることにした。
朝から新幹線に乗って、美味しいお弁当を食べて、その地へ向かう。
もしあいつがその土地にいるなら、その土地を気に入ってるなんて話、一度も聞いたことがなかったな。
駅のホームに降り立つと、秋の薫りを含んだ風が俺の顔に前髪をかからせた。
ここは紅葉が綺麗なことで有名な観光名所。
来たからには楽しまないとと思い、甘味が食べられるお店を探す。
特に甘いものが好きというわけでもないが、今は餡蜜が食べたい気分。
駅にある案内地図を見て、事前に調べた餡蜜の美味しいお店へ向かう。
「ねぇ」
何か聞こえた気がしたけど、観光地で人もめっちゃいるし俺に話しかけたわけじゃないだろうと思いながらスルー。
「ねぇおにいちゃんってば」
海で出会った高校生くんとおじいちゃんはしゃべらなかったし、幽霊…ではないだろう。あ、でも幽霊犬は吠えてるの聞こえてたな。
そもそもおにいちゃんじゃないしなー俺。おじさん手前のおにいさんだしぃ。
「幽霊カメラマンのっ!」
流石に振り返った。
それは絶対俺じゃん。
そこには女の子がいた。散る紅葉が彼女の頭上をひらひらと落ちていく。だけど彼女の頭に赤や黄色の葉は積もらない。
間違いない。この子も幽霊だ。
「どうしたの?」
普通だったら迷子?とか聞くんだろうけど、幽霊でも迷子になるのか疑問だったのでそう聞いてみる。
人が多いのに、道のど真ん中で膝を少し折り曲げ何も無い空間に「どうしたの?」と言ってる俺は、観光客から見たら「お前がどうしたの?」って感じに見えるんだろうなぁ。
「すもももあんみつ食べたい」
「すもも?、すももの餡蜜なんてあるの?」
「すももはわたしの名前だよ?」
「なるほど、俺も餡蜜食べたい。けど店がなかなか見つかんなくてさ」
「こっちだよ?」
すももちゃんに案内されて、無事餡蜜専門店に辿り着く。
餡蜜って白玉とか餡子とか果物が乗ったワンパターンしかないと思ってたけど、メニューを見る限りでは餡子の味とかアイスのトッピングとか、果物も色々ある餡蜜が写真付きで載っている。
え、超美味そうなんだが。
「どれがいい?」
すももちゃんはスタンダードな──つまり、俺が思い浮かべた所謂餡蜜を指さした。
果実とか色々乗ってるやつとかもあるのに、幼い彼女は迷わずそれを指さした。
「これに黒蜜トッピングがおいしいんだよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます