第3話 灰色の海②

僕にはしっかり五人写ってるように見えるんだけど、二人多く写ってるのがわかったらしかったのは、意外にもお父さんだけみたいだ。

娘ちゃんの言ったことに対して「そうかもな」なんて控えめに苦笑してたけど、今は目を見開いて必死に妻と娘にどう伝えるべきかとあたふたしていた。

この写真あげますよ、と言ってあげた。そしたらおじいちゃんのお供え用に買って来たらしい缶のチューハイをお母さんがくれた。

それを飲みながら去っていく家族と二人を交互に見る。



「よかったですね」



うんうんと満足そうにしている二人。

おじいちゃんの方が流れ着いた木の枝で、砂浜に何か字を掘っていく。


ありがとう、とか、お礼かな?


って思いながら見てたら、知ってる地名だった。

またどこかへ誘われるのか、俺は。

すると、高校生くんがもっとこっち来いって顔するから靴のまま波打ち際に立つ。

そしたら鞄開けろ、それだ、ってあいつの写真を指さすんだから思わずむせた。



「ここにあいつがいるの?」



高校生くんは首を横に振った。



「ここに行けばあいつがどこにいるかわかる?」



高校生くんもおじいちゃんも首を縦に振った。

ありがとうって伝えたかったけど、二人は家族が海から見えなくなるまで見送ると消えていった。


なるほど、チューハイを飲みながら急に理解する。

つまり、幽霊に会う、幽霊の写真を撮る、お礼にあいつの居場所のヒントをくれる、成仏する。

ってことらしい。

かなり不気味なことが自分の身に起こってる自覚はあるけど、あいつに会いたいからしょうがない。



「幽霊カメラマン、かねぇ」



今の俺に名前をつけるなら、たぶんこう。

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